米国の投資ブロガーによる記事を紹介します。

著者は米国の独立系投資運用アドバイザリー会社に勤務しており、当記事は著名投資情報サイト“ETF.com”の編集者のリコメンドがついています。

題して
The Investor’s Fallacy
投資家の誤った考え

直近の運用成績を敷衍して将来を占うことを戒めた記事です。
これがなかなか一筋縄ではいかない、示唆を含んだ内容で……

「現状の延長」「平均への回帰」歴史はいずれも否定する?



1939年~2019年にかけて、米国株式の「10年間の運用成績」と「続く一定期間の推移」の関係を調査しています。

著者によれば米国株式10年間の運用成績と、それに続く1~10年間の運用成績には相関がみられないといいます。



上のGIF画像の横軸が米国株式10年間のリターン、縦軸がそれに続く1~10年間のリターンです。

10年間の高リターンがその後の高リターンを呼ぶ、つまり正の相関があれば散布図のドットは右上がりの分布を描きます。

その逆、つまり10年間の高リターンがその後の低リターンを呼ぶ負の相関関係であれば、散布図のドットは右下がりの分布となります。



「正の相関→現状の延長」「負の相関→平均への回帰」となりますが、この散布図ではいずれの関係も否定されない、無関係の関係が観察されています。

歴史にかんがみれば、2010年~2019年の米国株式が好調だったことはこの先の米国株式を何ら占わないということになります。

当ブログではたびたび「平均への回帰」についてふれてきましたが、そうなるかもしれないしそうならないかもしれない、ということです。

巷間推奨されている世界株式時価総額加重平均インデックス投資に掉さす分析ということになります。

が……
記事を読み進めるにつれ混迷は深まっていきます。

2020年~2030年の米国株式投資は「大バラ色」?

著者によると、「20年間の運用成績」はその後10年の運用成績と一定の相関を示すといいます。



散布図のドットは右下がり……
つまりは負の相関であり、平均への回帰を示しています。
20年の長期で良い運用成績を収めると、その後10年はあまりふるわない様子が描かれているわけです。

しかしながら、著者の解釈はひと味違います。



2000年~2019年の20年間、米国株式は年率約6.3%のリターンを生み出しました。

上の図の赤い点は、米国株式が20年間で6~6.5%のリターンを生み出した期間を示します。
縦軸を見ると4倍強~5.5倍のあたりです。

つまり、歴史に照らすと、米国株式が年率6%~6.5%のリターンを生み出した20年間に続く10年で、米国株式は投資家の資産を4倍強~5.5倍に成長させたということです。

年率に換算すると約15~18.5%です。
2020年~2030年の米国株式投資はバラ色もバラ色、大バラ色なんじゃあ!

衝撃の結果と言えるのではないでしょうか?

調査方法に穴がある、とはいえ……

実際には、これら散布図は必ずしもうのみにできるものではありません。

1つはサンプル数が少ないこと。
本来、期間が重複するサンプルはそれぞれが独立したサンプルではないので、分析結果も説得力に欠けます。
たとえば「1936年~1945年」と「1937年~1946年」では9年間が重なってしまうため、独立したサンプルとはみなせない……ということです。

もう1つは一貫して実質金利が下がってきていること。
投資の実質収益は年を追うごとに目減りしてきているので、過去の運用成績をそのまま今後に引き写して考えるわけにはいきません。

ただし、それでも、著者は歴史を無視することが得策であるとは言いません。

仮に米国株式の今後の10年が年率7%のリターンを生み出すとすれば、その点は上の図の赤で示したものとなります。
現状の高評価にかんがみれば是認しにくい年率7%リターンであっても、過去の歴史からはこれほどの逸脱となるのです。

“This Time It’s Different”(今回は違う)というフレーズは、投資において我を失った者によってつぶやかれる常套句ですが……

「米国株式が今後の10年間で年率7%のリターンを生み出すとは考えにくい」という考えは、「今回は違う」と同じ意味になってしまうということです。

さてさて、どう考える?

いろんな解釈のしかたが取り得ると思います。

自分としてはやはり、あまりに経済環境の異なる時代の、しかも独立していないサンプルに基づいた分析をうのみにするのは危険という思いを拭い去れません。

加えて、株式投資のリターンが「無リスク金利+リスクプレミアム」で構成されるというごく基本的な立場に立てば、金利がいまとは比較にならないほど高かった時代の記録を修正なしで参照するのは妥当ではないとも考えます。

が……
これとて、「現在の低金利が継続する」と決めてかかっているからこその解釈です。
現状を安易に延長する「外挿バイアス」にとらわれているとも言えるわけです。

結局、月並みですが、すう勢となっている理論や解釈の物差しは当然重要であり有用ですが、未来においてはそれがひっくり返されるケースも起こりえることは否定してはいけないのでしょう。

あくまでも市場をありのままに受け止める姿勢と、市場からより効率的に収益を得る姿勢を常に両立させていくことが大事なのでしょう。

長期資産形成のすう勢である「世界・長期・分散・低コスト」はやはり必須だと思います。

そのうえで、自分のライフサイクルや性格、希望する収益等々にかんがみながら、慎重に投資手法を拡張・試行錯誤していくことが望ましいです。

僕の場合は「安物買い」が性に合っているので、世界分散を心がけながらタイムセール中の買いに徹しています。

人生を豊かにする「投資」の専門家
日野秀規でした。
ありがとうございました!

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