ブームになった孤独

実はここ数か月、一部のかいわいで「孤独」がちょっとしたブームになっていました。

英国で「孤独担当相」新設、現代社会の「悲しい現実」に対処
僕の記憶では、このニュースが火付け役だったかと思います。

900万人以上のイギリス人が、しばしば孤独を感じている。「話相手や、自分の思いや体験を分かち合う相手がいない」ことは「隠れた流行病で、すべての年齢層に影響を与えている」と。

孤独を感じながら生活することは、たばこを1日15本吸うのと同じくらい、そして肥満より深刻な健康被害を及ぼすそうです。

孤独が原因の体調不良による従業員の欠勤や能率の低下は、国全体で見ると巨大な損失になるとのことで。孤独が原因の体調不良って……アル中とか??

そこでイギリスでは正式に「孤独担当大臣」がおかれることになりました。実際には何をするのか、少し調べてみましたがまだ詳しい報道はないようです。

そして、1月にこの記事が出て以来、日本でも「高齢者」あるいは「男性」の孤独についての記事がさまざまなニュースサイトや雑誌で見られました。

世界一の高齢国であり、若い世代の間でも晩婚化が進み、KKOなんてことばが聞かれるくらいの日本ですから、もう全然ひと事じゃないというわけです。

個人的にも、孤独はひと事ではないので……続報にもできるだけ目を通してきました。そこで、これまでの記事で手薄だった部分を補足してみたいと思います。

この記事はこんな人が書いてます。プロフィール

ロンリーなモンキー

 

価値のある孤独と、価値のない孤独

これまでに出た記事は、たとえば「LINEやSNSによるつながり強制の反動」で孤独が強調されているとか、「孤独という病」は伝染し職場を・男性を壊す、さてどうする? というような、説明と対処を解説するものがほとんどでした。もちろんそれはそれで興味深いのですが、もう1つ別の観点がほしい。

孤独って、人の状態であるとともに、人のこころのありようでもあるわけです。

もうちょっと、人によって孤独の感じ方にも濃淡があるとか、そもそも良い悪いの受け止めから違うのではとか、個人レベルでのやりこなしとか、そういうところがわかりたい。

そう思って自分なりにやりこなしを考えていた間に、ビンビン響いてきた一冊の本がありました。

孤独と不安のレッスン
日本を代表する劇作家のひとり、鴻上尚史さん(以下「著者」)の作品です。冷静さと温かさをかね備えた、すばらしいエッセイを書かれてきた方です。

著者は、孤独を大きく2つに分類します。「本当の孤独」と「ニセモノの孤独」です。

「本当の孤独」とは、自分ひとりで「孤独って何だろう?」と考え、深めていくことができる孤独。「ニセモノの孤独」は、みじめでさみしくて恥ずかしくて耐えられない!という思い込みで、走って逃げ出したくなるような孤独であるといいます。

価値のある孤独と、価値のない孤独があるというのです。

考えてみれば、一口に孤独といっても、その出どころはいろいろです。例をあげるとこんな感じでしょうか。

人との関わりがないとき。
自分をいつわって人と関わっているとき。
自分を打ち明けられる相手がいないと感じているとき。
自分から関わっていくばかりで、人から求められることがないと感じるとき。
承認欲求が満たされないとき。

こんなふうに感じることはあるでしょうか。
こんな自分はみじめだと感じることが、あるでしょうか?

もうちょっと続きます。

 

「本当の孤独」に浸れる方法

著者はこう言います。

一人がみじめなんじゃなくて、一人はみじめだと思い込んでいることに、苦しめられているんじゃないかと、僕は思うのです。
「一人はみじめじゃない」と思うことができれば、一人の時間は、びっくりするぐらい豊かな時間になります。

みじめさは自分の心が生み出しているのだから、気の持ちようで変えることができる。それは自分の孤独に向き合い、孤独に価値を与えることで可能になると著者は続けていきます。

若いころ、携帯電話もスマホもない時代に南の島に一人旅に行った時のこと。部屋にテレビもなく、数日でやることが尽き、毎日海を見てボーッとしていたそうです。すると、

突然、「自分はその仕事が嫌いなんだ」という思いが浮かびました。それは、本当に突然でした。

どうやってその仕事をしようと、なんとなく考えていたのです。
そしたら、突然、「自分は、そもそも、その仕事が大嫌いなんだ」ということに気づいたのです。

 そんなこと、まったく意識していませんでした。無意識という領域から、「嫌いだ」という思いが、まるで潜水艦が海面に浮上するように現われました。
自分で自分の思いに驚きました。

続いて、「僕は本当は、あいつが大嫌いなんだ」という思いも浮かびました。やっぱり自分で、自分の発見に驚きました。
ずっと、その人とどうやって仕事をしようかと考えていたのです。
僕は、自分で自分の本心に驚きました。 

青い海や白い雲を、ただぼーっと眺め、持ってきた本をパラパラとめくりながら、なんとなく毎日を過ごしているうちに、突然、「自分は本当はどんな仕事がしたくて、誰が嫌いなのか」が分かったのです。
それは衝撃的な体験でした。
(略)
僕は一人だったからこそ、自分の一番深い部分と対話できたのです。
この時、僕は、「本当の孤独」を体験していました。

暖かくて、人に気をつかう必要もない場所で、からだとこころを芯まで緩めたら、「本当の孤独」がこころの深いところまで連れて行ってくれた、というわけです。

時間に余裕のある方でもなければ、何日も旅行に行くのはむずかしいかもしれません。かといって、日々の生活でガシガシ削られる気力・体力を回復させ、重ねて楽しみも得るには短すぎる週末を、「孤独に浸りきる」のに費やすのも勇気がいりますよね。やっぱりさみしさ、みじめさが襲ってくるかもしれないし。そこで気力体力の回復もかねて1日だけ、おすすめなのが……。

本書を読むずいぶん前のことです。僕が個人事業を始めたばかりのころ、過労死寸前で何とか1つの仕事をやり切った翌日。

別の仕事も待ち構えていましたが、1日だけ何も考えずゆっくりしようと、朝からスーパー銭湯に出かけました。

当面の仕事はあっても、先行きのことは考え切れておらず、不安もあり孤独と闘ってもいました。

でも、大きな風呂で手足を伸ばして、好きなだけからだを温め、ガマガエルが立ち上がったようなフォルムのご老人がたに囲まれてのんびりお湯に浸かっていれば、それはもう、みじめとはかけ離れた気分でした。こころもからだもすっぱだか、無防備でいられることが気楽で、ゆかいさしかない!

ロンリーを満喫

スマホの電源を切って、ほの暗い休憩スペースのリクライニングシートに横になり、いちご牛乳をぐいっとやります。テレビ付きなら画面にタオルをかけて隠します。そして、仕事の不安もさみしい気持ちも思い浮かぶにまかせます。

眠くなったら寝て、目が覚めても起き上がらず、竜宮城やら桃源郷やら、普段の生活とは少し違う場所に来たつもりでぼんやりしてみるといいです。お風呂も何度だって入れます。

このスパ銭通いを3,4回繰り返して、僕は何となく個人事業をやっていく心持ちを整えていきました。思えば、不安をやりこなし、ひとりの時間を充実させる手を考え、孤独に慣れていくための手順だったんだな……と。

人間のこころもからだも、すぐには変わりません。

自分寸法の「孤独の繭(まゆ)」が作れるようになるには時間がかかります。1回のスパ銭では何も起きなくても、回を重ねればすんなりぼんやりできるようになります。そのうち、ピースフルな孤独に慣れてくるはずです。

 

「本当の孤独」が自分との対話を生み、成長させる

「本当の孤独」について、著者は続けます。

一人になって、あなたは「本当の孤独」と向き合います。
(略)
そして、あなたの深い部分と本音の対話をすることで、あなたは成長します。
人間は、一人でいる時に成長するのです。
(略)
自分一人で考える時間がなければ、あなたはどんなに立派な話を聞いても、どんなに役立つ本を読んでも、その考えやアイデアは、あなたのものになりません。

 うっとうしいつきあいをやめ、「本当の孤独」に出会ったあなたは、自分との対話を始め、そして、成長します。 そして、成長した結果、あなたは、新しいネットワークを発見するのです。
(略)
あなたは、今のあなたが必要な人を見ているだけなのです。
どこかで、必ず、あなたは、あなたが知り合えてよかったと思える人と出会います。
あなたが、「本当の孤独」の中で、成長すればするほど、その確率は高くなります。成長すればするほど、出会う相手は素敵になります。
(略)
ですから、あなたが「ニセモノの孤独」に苦しんでいれば、出会う人は、「ニセモノの孤独」に苦しんでいる人です。
あなたが、「本当の孤独」に生きていれば、出会う人は、同じく「本当の孤独」を生きている人なのです。

たしかに、ひとりの時間だからこそできることがあります。僕の場合は仕事のほか、キックボクシングに落語のけいこ、読書です。

新しいからだの動きや落語の語り口、知識をしみこませて、自分を変化させていくことに時間をかけています。これで「本当の孤独」に至れているかどうかは、わかりませんが……新しいネットワークの発見を、楽しみにしていきたいと思います。

あなたはどうやって、「本当の孤独」と向き合いますか?

本書はこの後、「不安」と「自意識」の話に展開していきます。続きはまた次回、一緒に考えていきましょう。今回も最後までお付き合いいただきありがとうございました。
Stay tuned

(参考文献)

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