新興国株式の「低コスト」「バリュー」インデックスファンドはどんなふうに使えるか?
のお話しです。
いつもありがとうございます。

大和証券投資信託が運用する低コスト投資信託「iFree」シリーズで、新興国株式に投資する商品が「iFree新興国株式インデックス」です。

インデックス投資商品は同業他社もさまざまなシリーズを提供しています。
eMaxis(三菱UFJ国際)・SMT(三井住友T)・たわらノーロード(アセマネOne)・ニッセイ(ニッセイ)・ Smart-i(りそな)などです。

この中で、iFree新興国株式インデックスだけがスマートベータ指数を採用しています。
低コスト時価総額加重インデックスという王道から少し外れているわけです。

その「外れ方」と「外れ方の活かし方」を掘り下げてみます。

商品性徹底解析

・スマートベータ指数「FTSE RAFIエマージング指数」に連動するファンド。
・インデックスファンドではあるのでコストは低め。アクティブ運用の中で考えるなら特筆すべき低コスト。
・バリューファクターを取りに行くファンド。

FTSE RAFIエマージング指数とは
MSCIエマージングマーケッツ指数や、その拡張版であるMSCIエマージングマーケッツIMI指数といった時価総額加重インデックスとは異なり、4つの経営指標を参照して企業の価値を評価しその採用と割合を決めています。

総資産の簿価(ブックバリュー)、キャッシュフロー(現金収支)、売上、配当の4経営指標をスコア化し、ルールに従ってポートフォリオに組み入れていきます。
4指標と株価の比率を用いて株式の価値を評価することで、割安な株式の比重が高くなります。

さまざまな地域別・時価総額別の指数が用意されており、日本市場については野村アセットからNEXT FUNDS R/Nファンダメンタル・インデックス上場投信(1598)が提供されています。

低コストなのか高コストなのか?

最低コストを誇るeMaxis Slim、同じくスマートベータ商品であるたわらノーロードplus、海外ETFのDEM・DGRE、資産額最大の新興国株式アクティブファンドである新興国ハイクオリティ成長株式ファンドとの比較です。
iFreeの経費率0.778%はスマートベータ商品のなかでは十分に競争力がありますが、eMaxis Slimとは0.466%の差があります。

このコスト差は2つの要素に起因します。
1つは、ルールベースでの銘柄ピックアップ・重みづけによる算出を行うスマートベータ指数は時価総額加重インデックスよりも使用料が高いと思われることです。
そしてもう1つ、時価総額加重インデックスでは生じない四半期ごとのリバランスに売買コストがかかってしまうことによります。

バリューファクターをとることで長期的にこの差を上回る収益が得られるか。
バリューファクターを活かす投資タイミングがとれるか。
少々の勉強と手間が必要ですが、見返りのある投資手段だと思います。

なぜFTSE RAFIエマージング指数が選ばれたのか?
同業他社のインデックス投資商品では時価総額加重インデックスが採用されているのに、大和証券投資信託だけがFTSE RAFIエマージング指数を採用したのはなぜでしょうか?

その理由は公式には語られていません。
が、厳しい競争環境の中で独歩の道を進む理由があるはずです。
推測の手がかりとして、iFree新興国株式インデックスが世に出た2016年にさかのぼってみます。

FTSE RAFIエマージング指数の起算点(バックテスト含む)である1994年から2015年までの成績は大変すばらしいものです。
MSCIエマージング指数に比べ、年利で5.63%上回っていました。

一般に新興国は先進国よりも輸出入や為替に経済が影響される面が大きく、株価のリスクも大きくなっています。

そこで、配当を出す堅実な株式を拾い上げ、簿価や売り上げ等に比べて割安な銘柄をピックアップするFTSEエマージング指数は、時価総額加重インデックスに比べリスク/リターン比にすぐれるという判断が行われた可能性があります。

iFree新興国株式インデックス(青)が提供されて以降の比較チャートです。
時価総額株式インデックス(赤:EXE-I 新興国株式)に比べ、3年弱で約10%の差をつけています。
というわけで、iFree新興国株式を信じればOK!といくのでしょうか。

FTSE RAFIエマージング指数の「バリューファクター」

2016年9月~2019年5月ではFTSE RAFIエマージング指数が時価総額加重インデックスを上回りましたが、上の比較表を今一度確認します。

2009年から2015年にかけて、実は7年連続でFTSE RAFIエマージング指数が負けていました。
これは、近年の新興国株式では「バリューファクター」が負けていたことと軌を一にしています。

MSCIエマージング指数のサブ指数であるバリュー/グロース指数の比較です。
2010年~2015年にかけて、やはりバリュー指数の調子がよくないことが見てとれます。

割安な株式で構成したポートフォリオは、そうでないポートフォリオを長期で上回る。
これが単純なバリューファクターの効果です。
ただし、数年単位でバリューファクターは顔を出したり引っ込めたりするようです。
タイミングが肝心です。

バリューファクターにうってつけの日

実際の投資行動にバリューファクターをどう活かしたらよいのでしょうか。
ファイナンス研究の成果を見てみます。

・割安株が超過収益を獲得してきた理由は、割安株ポートフォリオが市場ポートフォリオに比べ相対的にリスクが大きいことに対する代償であるという説明。割安株は、財務悪化などのリスクが高い傾向にある分、リターンも高い。
・経営効率に勝り柔軟性に富むグロース銘柄の企業に比べ、バリュー銘柄の企業は経済環境の悪化に柔軟に対応しにくい。
・財務レバレッジ(負債が多い)、経営レバレッジ(固定費が高い)、不確実な将来利益のために、バリュー株の方が高リスクである
・バリュー株と小型株によるポートフォリオはグロース株と大型株によるポートフォリオと比べ、実質 GDP ショックに対する感応度が高い。

これらの説明をかみ砕くと、「利益の大きい成長株や、財務やコスト管理にすぐれた優良株が投資家に買われて評価が高くなる環境の中で、そうでない企業のうち投資家の目に留まらず実態以上に割安になっている株式」がバリュー株であるといえそうです。

経営効率が比較的劣ったり、負債が多かったり、固定費が大きかったりするバリュー株は、経済ショックに際して業績が一気に墜落して割安が極度に進行します。これが「実質GDP ショックに対する感応度が高い」ということです。

市場心理が「不安」から「絶望」にある時こそ、バリュー株の仕込みにうってつけといえます。
市場平均や成長株、あるいは他のファクターに比べ大きなリカバリーが望めます。

関連の低いファクターとの組み合わせ
タイミングを取りたくない場合はどうでしょうか。

たとえば、「バリューファクター」と「低リスクファクター」は重なりの少ないポートフォリオとなります。
それぞれのファクターを利用した商品を保有して定期的にリバランスを行えば、割高なファクターを売って割安なファクターを買うことになるわけです。
これは長期的なリスクとリターンの改善に貢献します。

まとめ

iFree新興国株式インデックスは、スマートベータ指数「FTSE RAFIエマージング指数」に連動するファンドです。
総資産の簿価(ブックバリュー)、キャッシュフロー(現金収支)、売上、配当の4経営指標を参照した割安株ポートフォリオです。

iFree新興国株式インデックスのコストはスマートベータ商品・アクティブ投資商品のなかでは十分に競争力がありますが、市場インデックス商品とは年率0.466%ほどの差があります。

長期的にこの差を上回る収益が得るには、iFree新興国株式インデックスがよって立つ「バリューファクター」を活かすための、適切な投資タイミングをはかる必要があります。

経営効率が比較的劣ったり、負債が多かったり、固定費が大きかったりするバリュー株は、経済ショックに際して業績が一気に墜落して割安が極度に進行します。
市場心理が「不安」から「絶望」にある時こそ、バリュー株の仕込みにうってつけといえます。
市場平均や他のファクターに比べ、大きなリカバリーが望めます。

タイミングをはかる以外に、関連の低いファクターとの組み合わせ投資も有効です。
たとえば、「バリューファクター」と「低リスクファクター」は重なりの少ないポートフォリオとなります。
それぞれのファクターを利用した商品を保有して定期的にリバランスを行えば、割高なファクターを売って割安なファクターを買うことになるわけです。
これは長期的なリスクとリターンの改善に貢献します。

お相手は、人生を豊かにする「投資」の専門家
日野秀規でした。
ありがとうございました!

(参考文献)
バリューを見出す ファクター投資を理解する

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