もっか割安の新興国株式に、スマートにアプローチすることでインデックス投資を超えられる!
というお話しです。
ありがとうございます。

昨年半ばくらいから、新興国の株式が先進国、特にアメリカ株式市場に比べかなりの割安であることが話題になってきました。
以来数か月たちますが、いまだ投資機会としては悪くない水準です。

インデックス投資にとらわれない、新興国株式への長期投資手段を深掘りしました。

株式投資信託・ETFの三派閥

株式投資信託やETFの強みは、複数の株式にまとめて投資できる(ポートフォリオを組む)ことです。
ポートフォリオを構成する際の手法によって3つの派閥に分かれます。

①時価総額加重インデックス
②アクティブ
③スマートベータ

①②は投資に関心のある方であればおなじみですが、③はここ十数年で大きく伸長してきた「時価総額加重インデックスとアクティブのいいとこどり」を標榜する手法です。

時価総額加重インデックスは市場そのままをまるっと買い付けるため、極度に割高な株式でも持たざるを得ない。
アクティブファンドはアナリスト・ファンドマネージャーの分析検討に報いるためコストが非常に高い。しかも事前にどのアクティブファンドが優れた成績を上げるのかがわからない。運用者が変わればまったくの別物になってしまう。

スマートベータは、こうした批判を解消すると標榜します。
事前に決めたルールの通りに株式の取捨選択・割合決めを行うことにすれば、つどつど人力で分析検討を行う必要がないのでコストは下げられる。
割高株をはじき割安株を拾い上げるルールを作ってその通りに運用する。
こうしてスマートベータは注目を集めてきました。

投資手段

アクティブファンドは「事前にどれが優れた成績を上げるのかがわからない」ので省きます。

①時価総額加重インデックス投資
近年のブームで、新興国への時価総額加重インデックス投資手段は出そろいました。
無数にある商品の中でも連動するインデックスの網羅性から、
・投資信託:楽天・新興国株式インデックス・ファンド
・ETF:iシェアーズ・コア MSCI 新興国株 ETF(1658)
投資信託・ETFそれぞれ一択です。
コスト・運用成績とも大差なく、利用しやすいほうを選んでかまいません。

②スマートベータ投資信託
信託報酬1%以下・時価総額加重インデックス以外の投資信託です。


4商品のチャートです。
青:iFree新興国インデックス
緑:ひとくふう新興国株式
赤:たわらノーロードplus 新興国株式低ボラティリティ高配当戦略
黄:EXE-i新興国株式

最後発のiFree新興国株式インデックスが加わってからの期間では、iFree新興国株式(青)がもっともよい成績を示しています。
ひとくふう新興国株式(緑)は、3月から投資信託コードが変更されたため線が途中で切れています。
たわらノーロードplus 新興国株式低ボラティリティ高配当戦略は一貫してふるいません。
それぞれの商品の特徴はまた別記事でフォローしていきます。

③スマートベータETF
アメリカのETF運用会社であるWisdomTreeから、新興国株式のスマートベータETFが提供されています。
WisdomTreeは株式のリターンにおける配当の重要性を訴えた嚆矢であるアメリカの経済学者ジェレミー・シーゲルをアドバイザーに擁し、「配当加重」ETFを世界株式のさまざまな領域でラインナップしています。

・DEM  WisdomTree Emerging Markets High Dividend Fund
・DGS WisdomTree Emerging Markets SmallCap Dividend Fund
・DGRE WisdomTree Emerging Markets Quality Dividend Growth Fund
(比較対象 VWO Vanguard Emerging Markets ETF)

最後発のDGREが商品化されて以降のチャートです。

橙:DEM  WisdomTree Emerging Markets High Dividend Fund
黄緑:DGS WisdomTree Emerging Markets SmallCap Dividend Fund
黄:DGRE WisdomTree Emerging Markets Quality Dividend Growth Fund
(青:比較対象 VWO Vanguard Emerging Markets ETF)
(臙脂:参考 PXH Invesco FTSE RAFI Emerging Markets ETF)

最上位であるPXHは、iFree新興国株式と同じ「FTSE RAFI Emerging Markets index」に連動するETFです。
それぞれの商品の特徴はまた別記事でフォローしていきます。

スマートベータの淵源「ファクターリターン」

「ファクター」は日本語では「因子」です。
共通の因子を持つ株式を集めてポートフォリオを作ったときに、長期的に市場平均よりも良い成績を収めるケースが複数確認されています。
これを「ファクター投資」といい、ファイナンスや経済学分野で脚光を浴びている研究テーマであるとともに、アメリカではさまざまなファクターを用いたETFが提供されています。


①サイズ
時価総額の大きい株式(大型株)に比べ、時価総額の小さい中型株・小型株が長期の運用成績で上回るという効果です。
これまで世界中の市場で観察されよく知られているファクターであり、日本でもさまざまな「小型株ファンド」が提供されています。

しかし、実際には小型株が大型株を「平均的に」上回っているわけではなく、小型株が勝つ局面と劣る局面があります。そして、これまでに小型株が劣る局面が数年、十数年単位で続いた市場もありました。
市場平均の一部補強(サテライト)や、他のファクターとの組み合わせで利用していきましょう。

②バリュー
総資産の簿価と株価の比率(PBR)や1株当たり純利益と株価の比率(PER)、配当利回りなどの指標に照らして割安な株式が長期の運用成績で上回るという効果です。
CAPEによる株式市場評価もバリューファクターを利用した投資行動です。

これまで世界中の市場で観察されよく知られているファクターであり、名著とされる関連書籍も複数あります。

とくにサイズファクターとの組み合わせ(小型割安株)が長期的にすぐれた成績を示してきました。
しかし近年ではグーグルやアマゾンといったIT企業が牽引する成長株投資が脚光を浴び、割安株投資は日陰に追いやられていました。

MSCI EMERGING INDEXのグロース指数とバリュー指数を比較しても、ここ15年は明らかにグロース指数に分があります。
グロースの9勝6敗、年率リターンでも2%以上の差がついています。


成長株との格差が開きに開いたとき、ふたたび割安株のターンがやってきます。エネルギーをためている状態といえるかもしれません。

③クオリティ
収益の継続性や財務(借入が少ない)にすぐれる企業が、長期的に好成績を示す現象が観察されています。
クオリティの定義はさまざまで、のちにふれる「収益性」や「増配継続」をクオリティファクターとみなす考え方もあります。

④リスク
値動きの振幅がなるべく少なくなるように組み合わせた、リスクの少ない株式ポートフォリオが長期的に市場平均を上回るという効果です。
日本でも複数の「最小分散」「低ボラティリティ」といった名称の投資信託・ETFが提供されています。

実際には低リスクポートフォリオが市場平均を「平均的に」上回っているわけではなく、勝ち負けそれぞれの局面があります。とくにこの1年ほど(2018年~)は世界景気後退懸念や株式市場の動揺があったため、低リスク投資へのローテーションが起こっています。
低リスクポートフォリオが割高になってきているわけです。
市場平均の一部補強(サテライト)や、他のファクターとの組み合わせで利用していきましょう。

⑤収益性
株主資本利益率(ROE)や総資産利益率(ROA)、売上高利益率などさまざまな指標から収益性が高いと認められる企業は、株価も好調に推移するという効果です。
安定した経営の効率性が、安定株主による定期的な買いを呼び株価に反映されるという解釈ができます。
※モメンタム・投資ファクターは、国内で提供されている投資信託・ETFでは利用されていないので説明を割愛します。

ファクターをどう生かすか

各商品の詳細は別記事に譲ります。
ここでは、ファクターを利用した商品を検討する際の視点をあげてみます。

①コスト
前提として、ファクター投資を行うには時価総額加重インデックス投資(いわゆるインデックス投資)に比べてコストがかかります。

スマートベータ投信・ETFがあげる(と期待する)ファクターリターンが、楽天・新興国株式インデックス・ファンドとのコスト差を埋め合わせるだけのものになるかどうか。
これは正直わかりません。
ファクターの性質を知り、購入のタイミングをはかることが重要です。

②組み合わせ
ファクターにはそれぞれ、購入に適した時期・適さない時期があります。

たとえば、暴落の底で「低リスク」ファクターの商品に投資しても意味がありません。
暴落の底では、徹底的に買い叩かれる株式を多く含む「バリュー」ファクターへの投資が合理的となります。
(暴落のさなかでは底がわからないので、心情的には大いに低リスクに傾きます。そこでPBRやCAPEなどの長期で参考にできる指標に固執し、冷静に判断できるかどうかが勝負の分かれ目になります)
ファクターが注目されていない、人気がない時期と言い換えてもよいかもしれません。

関係性が低いであろうファクターを組み合わせて持つことには意味があります。
たとえば、紹介したものの中では「小型バリュー」と「低リスク」は重なりの少ないポートフォリオとなります。
それぞれのファクターを利用した商品を保有して定期的にリバランスを行えば、割高なファクターを売って割安なファクターを買うことになるわけです。
これは長期的なリスクとリターンの改善に貢献します。

まとめ

新興国の株式は現状、投資機会としては悪くない水準です。
長期投資を考えるにあたっては、いわゆるインデックス投資以外の手段を考慮できます。
インデックス投資ともアクティブ投資とも異なる投資手法として、「スマートベータ」が注目を集めています。

事前に決めたルールの通りに株式の取捨選択・割合決めを行うことにすれば、つどつど人力で分析検討を行う必要がないのでアクティブファンドに比べコストは下げられる。
エビデンスのある、割高株をはじき割安株を拾い上げるルールを作ってその通りに運用すれば、時価総額加重インデックスのように極度な割高株を持つこともない。
株式市場のリターンをより「スマートに」得られる。

こうしてスマートベータは注目を集めてきました。
信託報酬・経費率1%以下に絞っても、新興国スマートベータ投資信託・ETFは計6商品あり、選びがいがあります。

商品の選択にあたっては「ファクター投資」の知識を活かすことができます。
「ファクターリターンとコストのかねあい」や「ファクターの組み合わせ」に気を配ることで、インデックス投資を超える運用成績を上げられる可能性があります。

個々の商品については近日中の別記事に譲ります。

お相手は、人生を豊かにする「投資」の専門家
日野秀規でした。
ありがとうございました!

(参考文献)
Lazard Asset Management Factor Report May 2019
Swedroe: Factors & Emerging Markets
Swedroe: 3 Factor Investing Myths

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