言うことがいちいち芝居がかって大げさ。
みなぎる自信が満々で過剰。
おしつけがましい。

でも、ちゃんとお金持ちになった方法が書いてある。
ちゃんとできることが書いてある。
うまい下手は関係ない、とにかくやればいい。
ただ、現代の僕らはにはちょっと工夫が必要だ。

本多静六「私の財産告白」はそんな本です。
いつもありがとうございます。

「本多式資産形成法」は僕らを自由にする



人生指南の本、成功哲学の本、投資の解説本。

こうした書籍は世にあふれかえっていますが、その嚆矢とも古典ともいえるロングセラーが「私の財産告白」です。
文体や主張の強さは68年前の刊行という時代を感じさせる古めかしさで説教調ではありますが、むしろそれがいまの時代にはかえって新しく感じます。

大金持ちになろうというからには、何としても積極的に、人並み以上の大活動を覚悟しなければならぬ。頭も体も人一倍に働かさねばならぬ。しかも暮らし向きは消極的に、人並み以上にできるだけつめてかからなければならぬ。家族一同気を揃えて、最低生活に甘んじなければならぬ。
 (「私の財産告白」より)

「大活動」「最低生活」などの千鳥っぽい飛ばしワードや「ならぬならぬ節」が読者をねじ伏せにかかります。

真っ白で軽いパンが好まれる昨今に背を向け、あえて黒く重たい全粒粉ドイツパンを力一杯かみしめたときの、岩石の歯ごたえと独特の酸味。
そんな趣があります。
よく味わうと、その先にじわ~っと感じられる滋味があるのです。

著者の本多静六は1866年、埼玉に生まれます。明治維新の前年です。
苦学を経てドイツに留学し、25歳で東京帝国大学(現東京大学)で林学の助教授に就任します。
山林振興や造園の専門家です。

当時の東大教授は現在の比ではないくらいの知識人階級です。
現在の大学人はその専門性にかんがみると、一般のビジネスマンに比べ収入面ではさほど恵まれていませんが、本多が現役のころはそれなりの収入がありました。
しかし、本多は親類も含め9人家族を養っており、決してお金が有り余るような生活ではなかったといいます。

本多はドイツに留学した折に、経済学の師であるドイツ人教授に「個人資産の必要性」を強く諭されます。

まず優に独立生活ができるだけの財産をこしらえなければ駄目で、そうしなければ常に金のために自由を制せられ、心にもない屈従を強いられることになる。
(「私の財産告白」より)

具体的な資産形成法も伝授されました。
この教えを胸に帰朝した本多は、固い意思と実行力で資産形成に乗り出します。

①節約して投資する
②職業を「道楽化」する

この2点を核とした、本多式資産形成法です。

ドイツ人教授の教えにはおおいにうなずけるところがあります。
僕らの人生にはお金がなくてする我慢があり、収入を握られている相手の顔色をうかがう悔しさがあります。
「心にもない屈従」です。

一生なら5億円が。
中年の危機なら1億円が。
クソ会社に別れを告げるなら当座の100万円が。
折々の必要十分なお金で自由が買えることは誰でも身にしみてわかっています。
「経済的自由」です。(100万円は違いますが)

本多がこの生活を続けて35年経った60歳の時には、「数百万円の貯金、株式、家屋等のほかに、田畑、山林1万余町歩、別荘地住宅6か所」を保有していました。
そば1杯、コーヒー1杯が10銭のころです。
3000倍して現代の価値に直すと、貯金だけでも百億円は下りません。
まさに大富豪です。

1/4天引き貯金と積極投資



ごま塩ご飯が未来をつくる?

寄宿者を含め9人を養う立場になった本多は、経済的自由に向けて行動をはじめます。

これではいつまでたっても貧乏から脱けられない。貧乏を征服するには、まず貧乏をこちらから進んでやっつけなければならぬ。
(「私の財産告白」より)

「貧乏を征服する」ために、給料だけでは決して楽はできない生活であるところをさらに切り詰める「1/4天引き貯金法」を開始しました。

毎月の給料から1/4を天引き貯金し、残りの3/4で強引にやりくりし生活する。
給料前にごま塩ご飯になったとしてもやり切る。
ボーナスなどの臨時収入はすべて貯金する。

現代に引き直してみるとどうでしょう。
たとえば年収350万円の単身者の場合で考えてみます。

月収が25万円、月々の手取りが約20.7万円。
この3/4で生活するとなると、毎月天引きで5.2万円を貯蓄し、15.5万円で生活することになります。
年に2回、合計で額面50万円のボーナスはそのまま貯金します。
これはなかなか苦しいですが、不可能ではありません。

業務スーパーやOKストアをフル利用して自炊し弁当を持参する。
飲みや遊びは半分に控え、公園や無料イベントで楽しむ。
本は図書館で借り、映画はアマゾンプライムで見る。
2年、1年と期限を切ればきっとやり抜けますし、思いのほか早く慣れてきます。
どうしてもムリなら、たとえば貯金の割合を1/5に緩和する手もあります。

これで1年に約100万円の貯金ができます。
給料が上がってくれば生活費も増え、だんだん楽になってきます。



投資をしたらお金が「殖えてきて、殖えてきて」
こうして作った貯金を本多は積極的に投資しました。
当時(1891年)まだ全国までいきわたっていなかった鉄道に目をつけ、鉄道会社の株を買いこみます。
数年間、毎年1割の配当をもらい、株価が2倍半になったところで売り抜けました。

また、専門分野である山林にも着目し、埼玉は秩父で約1万町歩(約99平方キロメートル、関東なら横須賀市・関西なら西宮市程度の広さ)の山林を買い占めました。
買値の70倍で売れたといいます。

現代はこんな夢のような投資先はさすがに探しにくいですが、たとえば仕事で関わっている分野などで成長の芽を見つけて投資することはできます。
つみたてNISAやiDecoといった優遇をフル活用するのも大事な工夫です。
当ブログを参考に割安国に投資するといった手間も、長期投資であれば割に合います。
「足らぬ足らぬは工夫が足らぬ」の精神です。

僕も若いころから、本多式ほどストイックにはしていませんでしたが、同じような感じでやってきました。
もともとあまりぜいたくに興味がなく自炊も好きなので、毎月天引きで投資信託をせっせと購入し続けていたら、15年ほどで3500万円の資産ができていました。
投資で自分だけの大成功を収めたわけでもなく、誰にでもできた行動の結果です。

金というのは雪達磨(ゆきだるま)のようなもので、はじめはホンの小さな玉でも、その中心になる玉ができると、あとは面白いように大きくなってくる。(中略)金があるところにはまたいろいろいい智慧も出てきて、いよいよ面白い投資口も考えられてくる。こうなるともう、すべては独りでに動き出し、やたらに金が殖えてきて、殖えてきて、我ながら驚くものである。
(「私の財産告白」より)

「殖えてきて、殖えてきて」と繰り返すくだりが心に響きます。

節約をしんどく感じないために

本多式資産形成法はこのように、決して難しいことではありません。
やると決めてやりさえすれば、誰にでもできることです。
優れた知識やスキルが求められるようなものではありません。

とはいえ1/4天引き貯金生活を続けていくことは、事情によっては相当につらいことかもしれません。
投資も向き不向きがあり、心の平穏を保つことがむずかしくなる場合もあります。

そこで重要なのが、「職業を『道楽化』する」ことです。
「職業を『道楽化』する」ことが、本多式資産形成法を貫徹させるヒケツなのです。

明日に続きます。
資産形成、一緒に頑張っていきましょう!

お相手は、人生を豊かにする「投資」の専門家
日野秀規でした。
ありがとうございました!

(参考文献)

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