一介の東京帝大(現東大)山林学の助教授が25歳から蓄財をはじめ、35年経った60歳時点での金融資産は百億円を下らず。
資産形成の熱血漢・本多静六が節約と投資と人生観を語った書籍が「私の財産告白」です。
前回の記事でご紹介しました。

①節約して投資する
②職業を「道楽化」する

この2点を核とした、誰にでもできる資産形成法です。
(人によってはそれなりの苦しみを伴いますが)

今回は
①ちょっと苦しい本多式資産形成法を続けるための「職業の道楽化」
②実際のところ、どうするの?
について紹介しながら考えていきます。
いつもありがとうございます。

「職業の道楽化」とは?



本多式資産形成法の要点は、

①毎月の収入のうち1/4を貯金して3/4で生活する、臨時収入はすべて貯金する
②貯金を積極的に投資する

でした。

「給料前にごま塩ご飯生活になっても曲げるべからず」というエクストリーム節約法であり、また投資に慣れていない人には資産価格の上下が大きなストレスになる可能性があります。
心を強く保ちながら、そのうえで収入の増加のため仕事に励んでいかねばなりません。

そのために、本多は「職業の道楽化」という考え方を説きます。

本多の本業は山林学の研究者・大学教員ですが、その俸給は決して少なくはないものの、たかがしれています。

彼は本業の知識経験を活かし、さまざまな企業の顧問や講演、社会奉仕、書籍執筆に精を出しました。
現代のホットトピックである、本業とのシナジーが活きる「副業」に積極的に取り組んでいたわけです。

副業の収入はすべて貯金に回り、投資され大きな富となりました。
また、本業・副業合わせた仕事に全力を注いでいたため、趣味や余技に時間や資金を消費することもありませんでした。
仕事が知的好奇心と自尊心を満たすものだったため、それ以外のことにかまける必要がなかったのです。

職業がすなわち彼の娯楽であり、趣味でした。
これが「職業の道楽化」です。

資産形成のために職業の道楽化を試みるのはいささか議論が転倒してしまいますが、本多の実状はこのようなものでした。
とはいえ、収入アップを目的として仕事に全力を注ぐためには、仕事に喜びを感じるほうが有利であることは間違いありません。
あるいは、好き好きある議論ですが「趣味を極めて収入につなげる」という方向も考えられます。

資産形成の中で、単なる収入源という以上の意味を仕事や趣味に持たせる試みをすること。
本多のいう「職業の道楽化」を自分ごととして考えてみましょう。

本多式資産形成法の具体的な方法論とは?

①副業・節約・投資
②時代に合った投資・底値で買う・レバレッジ

この2点が本多式資産形成の「本体」です。

先ほどご紹介したとおり、本多は執筆や講演、顧問業などの収入もすべて投資に回し、富を築きました。

本職のたしになり、勉強になる事柄を選んで、本職以外のアルバイトにつとめることである。
なんでも働けるだけ働きぬく。
(「私の財産告白」より)

「働けるだけ働きぬく」です。
イヤになってしまいますが、そういうことです。

節約については前回の記事でご説明しました。

投資については、
「投機」ではなく「思惑」ではなく、あくまでも堅実な「投資」でなければならない
と本多は言います。

鉄道株や山林投資といった「時代に合った」投資のほか、関東大震災の直後に東京電燈(インフラ企業)を購入するといった「底値で買う」投資も行っていました。
現代でいえば、2008年のリーマンショックの際に市場に引きずられて下げた優良企業に大きく投資するといった方法があてはまります。

本多がすでに財も名もなしていた1951年、ひとりの青年が訪ねてきます。
「さまざまな商売をして80万円作ってきた、これを2億円にしたい」といって教えを乞う彼に、本多は「お安い御用」と言って資産形成を指南したそうです。

①分散投資。質屋と理髪店に出資し、月4分(年48%!)の利息を得る
②レバレッジ。①の返済金と利息を銀行に預け、それを担保に貸し出しを受ける

現代の投資でもよく言われる「卵を1つのざるに盛らない」分散投資の有効性を説いています。
しかしながら、当時の利率の高さには驚くばかりです。

綿密に計算したうえでのレバレッジの利用も注目すべき点です。
これは、現代で言えば信用取引や住宅ローンの利用が当てはまりそうです。

経済ショックなどで市場が急落した時には、信用取引を利用してETFなどを購入することで、比較的安全に信用の利率(約3%)を超えるリターンを見込むことができます。

また、資産価値のあるよい不動産を適切な価格で購入することができるならば、可能な限り長い期間で住宅ローンを組んで住居費用を節約し、その差額を株式投資に回してもよいかもしれません。

「お金はきたない」価値観との闘争



本書は1951年に85歳を迎えていた著者によるものであり、その筆致は自慢と説教調が強いものです。
それには、資産形成に関して本多が受けてきたさまざまな毀誉褒貶が背景にあるように思います。

明治から大正・昭和初期にかけては、「武士は食わねど高楊枝」というフレーズに示される「お金はきたないもの」という価値観はまだ根強いものでした。
その時代に投資で財を成した本多は大なり小なり毀誉褒貶を受けてきたようです。

大学人複数が寄付をする機会があり、その時に本多が大金を拠出したところ、金の出所が疑われ同僚が一致団結して本多をクビにする決議を行ったというエピソードがありました。
このような時代に業を煮やし、決して後ろ暗いところのない自分を示すために、いきおい筆致が強くなってしまったというわけです。

現代ではお金に対するアレルギーは当時に比べればかなり薄まってきています。
自分を律して頑張って、適切な投資をして正々堂々とお金を作ることは、むしろその人の堅実さや知性を表すことになると僕は思います。
公明正大に資産形成の話ができる現代を喜びたいですね。

節倹は出すべきものをチャンと出し義理人情も立派に尽くすが、ただ自分に対してだけは、足るを知り、分に安んじ、一切の無駄を排して自己を抑制する生活を指すのである。

前者(節約)は初めケチン棒と罵られても、のちには実力の蓄積によって本当に気前のいい人になりきることもできるが、後者は気前のよさにおいても実に大したこともできぬくせに、のちにはかえって哀れなものよ、馬鹿よ、意気地なしよと罵られ、ついには他人に迷惑をかけることが必至である(後略)

(「私の財産告白」より)

よくぞここまであけすけに言えたものだ……というところですが、渡る世間の真実が含まれています。
人を罵ることは厳に慎まなければなりませんが、自分のことは慎んで着実に資産形成を行っていきたいものです。

一緒に頑張っていきましょう!

お相手は、人生を豊かにする「投資」の専門家
日野秀規でした。
ありがとうございました!

(参考文献)

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