米国著名投資家ハワード・マークスの「米国の予防的利下げって、やばくない?」のお話です。
いつもありがとうございます。

「投資の哲人」ハワード・マークス



米国の運用会社オークツリー・キャピタルは、景気や信用(お金の貸し借り)サイクルを利用した逆張り投資で知られます。
運用資産残高は約800億ドル(約6.2兆円)にのぼり、高利回り債(ハイイールド債)と不良債権(ディストレスト・デット)への投資を得意としています。

創業者のハワード・マークスは顧客向けレターを定期的に公開しており、それをまとめた書籍「投資で一番大切な20の教え―賢い投資家になるための隠れた常識」は日本でも話題になりました。

オークツリー・キャピタルから本日届いた顧客向けレターより、ハワード・マークス最新の所信をご紹介します。

「予防的利下げ」について掘り下げた

レターのタイトルは“On the Other Hand”(もう一方では)
意味深です。

前回のレターは“This Time It’s Different”(今回は違う)でした。
我々は上昇相場の最終段階にいますよ、というお話でした。

今回は、トランプ大統領の圧力に苦慮するFEDが今月にも行うと目される「予防的利下げ」についての考察です。

景気後退の可能性が見えたとき、市場関係者やメディアの間では主に2種類の考え方が出回るといいます。

まず1つは(On One Hand)……
米国経済はまだ拡大し続けている。
金利引下げによる金融刺激策は、景気が低迷し、雇用創出に失敗している時にこそ効果がある。
しかし、景気が持続可能と目される成長を続け、失業率が50年ぶりの低水準にあり、賃金が上昇し、景気回復が歴史上最も長くなった今日のような状況では、刺激策は不必要なものと非生産的なものの中間に位置するかもしれない。

しかし、その一方で(On the Other Hand)……
人々は経済的な弱さの可能性を懸念している。
最近の市場の反応は、投資家がいつもの浅薄な見方に従っていることを示唆している。
弱い経済➡利下げ➡景気刺激➡GDP成長が強まる→企業利益が高くなる➡株価上昇、という経路。
パウエルが利下げの可能性を示唆すると、市場は反応を示し、S&P500が史上初めて3000を突破した。
投資家が利下げの見通しにあまりにも積極的に反応し、彼らが想定していたはすの経済の弱さにほとんど注意を払わなくなってしまっていないかは、常に考慮に値する。
このことは予期せぬ結果を招く可能性がある。

ハワード・マークスはこのようにまとめます。

ハワード・マークスの「第三の解釈」

さかのぼること12年前のことです。

2007年9月18日、ベアスターンズのMBSファンド破綻を受けて、バーナンキFEDは0.5%の利下げを行いました。

通常の金利操作では.025%単位で上げ下げを行うところ、いきなり0.5%の下げは「米国経済の極めてよろしくない兆候がFEDには見えているのではないか?」といぶかしむ向きも多かったといいます。

その後、度重なる利下げも米国経済の墜落を食い止めることはできませんでした。
この利下げから18か月後にかけて、S&P500は50%の下落をみたのです。

この事実を踏まえて、ハワード・マークスは第三の解釈を明かします。

パウエルの予防的利下げは、恒久的なGDPの拡大に寄与するわけではなく、需要の先食いにすぎないのではないか?

FEDに景気後退を力があるかというとそれは疑問に思う。
景気後退は本当に回避可能なのか、それとも単に延期可能なのか。

後者の場合、景気後退が自然発生するに任せた方が良いのか、それとも、不自然であってもできる限り延期された方が良いのか。

景気後退を先延ばしにしようとする努力が、FEDの力と意図を過度に信頼し、モラルハザードの再来を招くのではないか。
そして、FEDが一連の小さな景気後退を回避したとしても、それを続ける能力が限界に達したとき、最終的に到達するのは愚かな結末ではないだろうか。

FEDが一連の小さな景気後退を回避したとしても、それを続ける能力が限界に達したとき、最終的に到達するのは愚かな結末ではないだろうか。

さて、僕らのポジションをどうしよう?

米国経済・米国株式市場の墜落は日本、ひいては世界中に大きな影響をもたらします。
米国経済はあまりに巨大なので、欧州・中国・日本から火が出ても米国経済に延焼することはありませんが、その逆は容易に起こります。

なので、シナリオを想定し、行動プランを事前に策定しておく必要があります。
人は事前に想定していないことを、とっさに、うまくやることはできないからです。

① もっとも起きてほしくない事態(「愚かな結末」)を想定する。その時の行動計画とポートフォリオを考えておく。
② ①を念頭に置いたうえで、膠着状態をストレスなく過ごせるポートフォリオを考案し、実行に移す。
③ 膠着状態から、新たな上昇気流に乗る流れが見えた場合の行動計画とポートフォリオを考えておく。

こういった一連の作業が必要になっているわけです。

僕個人は、③は必要ないと思うので行っていません。
株式100%に戻すことはいつでもできますし、とりあえず「グローバル3倍3分法ファンド(1年決算型)」や「あおぞら・徹底分散グローバル株式ファンド」でも買っておき、それからゆっくり考えたらよいと思っています。

① はもう考えてあります。
世界各国の株式市場について、買い出動に入る指標の目安と規模を書き出し、その通りに淡々と実行する計画を立てています。

② はもう行動に移しています。
レイ・ダリオとデイヴィッド・スウェンセンのポートフォリオを参考に、我流の全天候型ポートフォリオを組んでいます。
この記事で詳しく検討しました。
格差縮小ファンド 第2ポートフォリオの運用を開始します

まとめ

運用資産残高約800億ドル(約6.2兆円)を誇る、米国の運用会社オークツリー・キャピタルを率いる著名投資家のハワード・マークスの顧客向けレターが届きました。

現在の相場に警鐘を鳴らしています。
レターのタイトルは“On the Other Hand”(もう一方では)です。

この数日中にも行われるといわれる「予防的利下げ」については一般に、第1の解釈、しかしもう一方では……の第2の解釈があるといいます。
・経済成長中の利下げは必要ない
・よくない兆候があるから利下げは必要。ただし結果として人々が過度に楽観的になるかも

ここで、ハワード・マークスは「第三の解釈」を披露します。

景気後退を先延ばしにしようとする努力が、FEDの力と意図を過度に信頼し、モラルハザードの再来を招くのではないか。
そして、FEDが一連の小さな景気後退を回避したとしても、それを続ける能力が限界に達したとき、最終的に到達するのは愚かな結末ではないだろうか。

「愚かな結末」に対処するには、行動プランを事前に策定しておく必要があります。

① もっとも起きてほしくない事態(「愚かな結末」)を想定する。その時の行動計画とポートフォリオを考えておく。
② ①を念頭に置いたうえで、膠着状態をストレスなく過ごせるポートフォリオを考案し、実行に移す。
③ 膠着状態から、新たな上昇気流に乗る流れが見えた場合の行動計画とポートフォリオを考えておく。

今のうちに考えておきましょう!
以下の記事は参考になると思います。
「現金は神」ではない 「不安な時期」の資産配分の考え方
徹底解析! NEXT NOTES低ベータ50(ネットリターン)ETNは「不穏な時期に頼れる相棒」

人生を豊かにする「投資」の専門家
日野秀規でした。
ありがとうございました!

(参考文献)

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