「ブラック・スワン」の秘教めいた言い回しに惑わされず、理性という物差しを使ってクールに収益向上を図りましょう、というお話です。
いつもありがとうございます。

不確実性を扱うもう1つのアプローチ



前回の記事で、「不確実な時期に投資すると儲かりやすい」というテーマを詳しく考えました。
不確実な時代の投資① なぜ有効なのか?

リスクとは確率を見積もれる事象。
不確実性は、発生確率が不明で計算できない事象。


皆が恐れおののく不確実性が横溢する時期に、「低リスク・高不確実性」に集中して投資すれば、勝つときは大きく勝ち、負けてもそんなに損はしない!というお話でした。

その「不確実性」について、また別の視点から掘り下げた記事をご紹介しつつ、もう一歩視点を進めてみたいと思います。

「ブラック・スワン」は「ナイトの不確実性」ではない?

サブプライム危機からのリーマンショックで世界経済の底が割れたか!?と皆がかたずをのんでいた2009年。

ジャストタイミングで翻訳が発売された書籍「ブラック・スワン」が、この危機を予言していたと大きな話題を呼びました。

ハクチョウは白いから白鳥である。

という常識が「黒い白鳥」が発見されたことで覆されたという事象を引き、金融市場で起こる「従来の経験から予測できない事態」つまり不確実性が、経済に多大な影響を及ぼすことを論じていたのです。

ところが……
2001年の米国ITバブル崩壊と2008年の米国不動産バブル崩壊の両方を、的確に予言した経済学者がいます。
2013年にノーベル経済学賞を受賞したロバート・シラーです。

シラーは群集心理やそれに影響を与えるメディア、中央銀行の金融政策など複数の原因を分析することで、株式や不動産の価格高騰に警鐘を鳴らしました。

ひと言で言えば、「収益力に見合わない、その数十倍もの価格がついてしまった資産は近い将来急激な下落に見舞われる」ということです。

つまり、収益力と資産価格の歴史的な関係(価格と収益率の倍率)を追っていけば、価格高騰や割安がわかるということになります。

「不確実性」と思われていた経済危機ですら、予測可能で対処できる「リスク」に変わるのです。

不確実性という「思い込み」を打破して、取扱可能な「リスク」に変換しよう!

米国のバリュー投資情報“ValueWalk”に掲載された記事です。
The Black Swan Concept Confuses Our Understanding Of How Stock Investing Works More Than It Illumines It
ValueWalkは機関投資家に投資情報を提供するサイトです。

①ブラックスワンは「不確実性」ではなく予測可能であること
②バイアンドホールドを捨てて予測に基づいて行動すれば投資の収益が改善できること

上記2点がその眼目です。
兼業個人ファンド投資家にも大きく関わってくる内容ですので、掘り下げて考えてみます。

①CAPEでわかる投資家の「期待」
シラーは株式バブルの予兆を知るツールとして、当ブログでも幾度も触れてきた「CAPE」を用いています。
市場平均等の「株価」を「10年分のインフレ調整済み平均利益」で割ったものです。

株式から投資家が得られる収益のうち、経済成長が寄与する分を見積もることはできません。
経済がどの程度成長しているかは後になって分かることですし、さらにそれが株式市場にどの程度割り当てられているかなど知る由もないからです。

しかし、投資家が大きな「期待」をもって売り買いのキャッチボールを激しく行っていけば、株価はぐんぐん上昇します。
ブームの状態です。

この、投資家の「期待」を知る方法としてCAPEは有力です。

たとえば米国株式市場でCAPEが30倍を超えるような異常値であれば、投資家の期待が過熱している状態にあるとは言えるわけです。

CAPEの数値を見ながら株式保有を調整すれば、大暴落を事前に避けることは、可能です。

ただし、こうしたポジション調整が投資家の収益増大に本当につながるかどうか……。
続けて考えていきます。

②バイアンドホールドは「理性で避けられるアクシデントに突っ込んでいく思想」という風潮
近年、日本でも一般個人に投資をすすめる雑誌記事や書籍が多数世に出回り、インターネットでもいくらでも情報を得ることができます。
ささやかながら当ブログもその端くれにあたります。

一般個人が兼業で投資を行う際の「正解」とされている手法があります。

日本と世界各国の株式に分散投資する、コストのなるべく低いインデックスファンドをコツコツ買付け長期保有する。
「バイアンドホールド」といわれる手法です。

バイアンドホールドが手法として認められている裏側には、「相場の高低を取る売買を行ってもうまくいかない」という事実があります。

暴落する前に売り抜けることがむずかしければ、さらに暴落の底で再参入して利益を拡大することもむずかしい。
それを長期にわたって成功し続けるのは不可能。
それができるならプロのファンドマネージャーがとっくにうまくやっているはずだが、実際にはそんな例は皆無である。

ということです。
一理も二理もあります。

破局的な暴落についても、「ブラックスワン=不確実性」として受け入れ、身をゆだねる思想がバイアンドホールドです。

しかし実際には、ロバート・シラーは株価や不動産価格の割高割安を測る物差しを使って、市場の崩壊を二度も予言しました。
経済危機はブラックスワン=不確実性ではないのです。


長期のCAPEデータをたどれば、過去の市場崩壊直前にとったCAPEの数値を知ることができます。
市場と相対する人間心理が投資行動に韻を踏ませると考えれば、「要警戒CAPE値」と意識できる水準を定めることができます。

加えて、ある年のCAPEの数値と、その10年後、20年後の投資収益の関係をプロットしていくことで、おおまかにCAPEの数値(大小)の変化が長期株式収益をどう予言するかの傾向もわかります。
株式保有の増減に役立てることも可能です。

これらを自分の感情をはさまず、事前にCAPEの値と対応する行動を決めておき、システマチックに実行すれば市場心理を逆手に取った収益増大が実現できます……

と、このような内容の記事を米国のバリュー投資情報“ValueWalk”にもう1つ、同著者が寄稿していました。
わかりやすくするため補足を加えてご紹介しました。
Neither Buy-And-Hold Nor Valuation-Informed Indexing Is Truly Subject To A Testable Hypothesis

実際、うまくやれるのか?

①資産配分変更のアプローチ
ここで問題は、

①本当にうまくいくのか
②実際どうやったらよいのか

です。

実は現状がまさにそうですが、CAPEが市場心理の過熱を示しているような水準になったとしても、直ちに下落するわけではなくそこからひと伸び、二伸びすることはあり得ます。

そこは捨てて下落に備える勇気と、勇気を支える心からの納得が必要です。

著者は、「市場のタイミングをうまくとる」ことを行うのではなく、「株式の割安・割高の評価に応じて資産配分を変えるアプローチ」を提唱しています。

過去のデータからみる、米国株式市場の適正なCAPEは14倍です。

過去のCAPEがとった最低の値は7倍で、適正値14倍の半分でした。
一方、CAPEが24倍以上を示すとしばしば暴落が発生しています。

著者が過去のデータを用いてシミュレーションした結果、

①CAPE ~12:株式90%・債券10%
②CAPE 12~21:株式60%・債券40%
③CAPE 21~:株式30%・債券70%

このように資産配分を変化させていくことにより、株式60:債券40の配分で一定させるよりも長期的な収益が劇的に向上したといいます。

バイアンドホールドを離れる勇気は持てたでしょうか?

②米国民でない僕らはどうするか?
これまでの議論はあくまでも米国株式に関するものでした。
米国の投資家は投資対象が米国株式・債券に偏っていることが多いのでこれで十分という一面はあります。

兼業個人ファンド投資家として、多かれ少なかれ世界各国の株式に分散投資している方にはあまり関係ない……
ということは、ありません。

実際のところ、もっか過熱している株式市場は米国とスイスだけです。

しかし、米国株式を6割以上含む先進国株式や米国株式を4割程度含む全世界株式も、米国に引っ張られて数値上は割高領域に入ってしまっています。

米国株式を単独で減らすアプローチをとることができれば、将来利益に結び付く可能性が高いのです。
その方法は別の記事で詳しく解説しました。
どこかで非常ベルが鳴っている 米国株式からの逃避手段

まとめ

米国のバリュー投資情報“ValueWalk”に掲載された記事です。
眼目は以下の通りです。
①ブラックスワンは「不確実性」ではなく予測可能である
②バイアンドホールドを捨てて予測に基づいて行動すれば投資の収益が改善できる

ITバブル崩壊やサブプライムバブル崩壊といった経済危機はブラックスワン、つまり可能性すら計り知れない不確実性ととらえられています。
これを暗黙裡に前提とする投資手法が「バイアンドホールド」です。

しかし、米国のノーベル賞受賞経済学者ロバート・シラーは、資産価格を評価することで経済危機を予言しました。

予言が可能なものは不確実性ではありません。
CAPEの数値を見ながら株式保有を調整すれば、大暴落を事前に避けることは、可能です。

長期のCAPEデータをたどれば、過去の市場崩壊直前にとったCAPEの数値を知ることができます。
市場と相対する人間心理が投資行動に韻を踏ませると考えれば、「要警戒CAPE値」と意識できる水準がわかります。

加えて、ある年のCAPEの数値と、その10年後、20年後の投資収益の関係をプロットしていくことで、おおまかにCAPEの数値(大小)の変化が長期株式収益をどう予言するかの傾向もわかります。
株式保有の増減に役立てることも可能です。

これらを自分の感情をはさまず、事前にCAPEの値と対応する行動を決めておき、システマチックに行えば市場心理を逆手に取った収益増大が実現できるということを、記事の著者は長期のCAPE推移と株価の関係をさかのぼったシミュレーションで示しました。

僕ら兼業個人ファンド投資家は意図的に米国株式に投資しているわけではありませんが、世界株式に投資するファンドを保有していれば、多かれ少なかれ米国株式は含まれています。

米国株式を6割以上含む先進国株式や米国株式を4割程度含む全世界株式も、米国に引っ張られて数値上は割高領域に入っているのです。

米国株式を単独で減らすアプローチをとることができれば、将来利益に結び付く可能性が高いです。
その方法は別の記事で詳しく解説しました。
どこかで非常ベルが鳴っている 米国株式からの逃避手段

うまくメリハリをつけて、かしこく心安らかに長期投資の旅を続けていきましょう!

人生を豊かにする「投資」の専門家
日野秀規でした。
ありがとうございました!

(参考文献)

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