希望的観測は捨て、現実的な改善を積み重ねていきましょう……というミもフタもないお話です。
いつもありがとうございます。

フィナンシャルタイムズ東京支局長による投資家への「警告」



ビジネス情報サイト“JBpress”に、英国の経済紙フィナンシャルタイムズの記事が翻訳されていました。
著しい低金利はまだまだ続く 投資家と政策立案者が検討すべき8つのテーマ

著者のロビン・ハーディングはフィナンシャルタイムズ東京支局長であり、同時に米国中央銀行(FED)ウォッチャーでもあります。
金融政策を専門としている記者です。

7月末の米国の利下げを機に、いよいよ定着しつつある「低金利世界」で、投資家と政策立案者が検討すべきテーマが8つ列挙されています。

ご紹介しつつ、その中から特に僕ら兼業個人ファンド投資家、ひいては日本で生きていく全員に特に関係する点について考えていきます。

低金利世界のテーマ・8

記事の要点は以下の通りです。

①長期の金利と長期的な経済成長の間には密接なつながりがある
②金融政策が効かなくなっている
③財政政策の頑張りが求められる
④金利の低下は債務の持続可能性を高める
⑤資本ストックが生産高に比べて増加する
⑥供給量が一定の資産の価値が高まる
⑦住宅需要が増加する
⑧低金利が貯蓄をさらに困難にする

以上の8テーマです。
それぞれに大変興味深いので、ぜひ記事にあたっていただきたいところです。

この中で①と⑧を僕なりに検討していきます。
「リスク資産の長期的な収益」についてです。

「長期の金利低下」と「長期的な経済成長」の密接なつながりとは?

①金利がすり減っていく世界で
通常、というか僕らがいままで生きてきた世界における「経済成長と金利の関係」はこんな経路です。

① 経済成長の明るい見通しがある

② 投資意欲高進・計画立案が増える

③ 資金需要が高まる

④ 長期金利が上がる

経済がうまくいっているときはこのような経路があります。

うまくいかなくなってきたときには、操作できる短期金利を下げて④→①の逆ルートを狙うわけですが、金利を操作する金融政策は「ひも」のようなものと言われます。

引くことはできても押すことはできない。
短期金利を上げて景気を引き締めることはできますが、短期金利を下げて景気を直接押し上げることはできません。

じわじわと効果が波及していくのを待つわけです。
近年ではこの波及効果も薄くなってきました。

こうした押し引きを繰り返しているうちに金利はすり減って、もはや金利の「下げしろ」つまり景気の「押ししろ」がなくなってしまいました。
経済成長率を以前のように高く見込むことはむずかしくなっています。

②経済成長がすり減っていく世界で
今後、世界の経済成長率が下がっていく趨勢が続くのであれば、実質ベースでの投資収益も減ります。

世の中に出回るお金を増やせば、手取りの投資収益を増やすことは可能です。
しかし実質ベースでの投資収益は、長期的には経済成長からの取り分でしかありません。

名目収益だけ増えても意味がありません。
ガム1枚が10円から1000円になったところで、ガムの味は変わりません。

これまで、経済成長からの取り分を得るもっとも有利な投資方法が株式でした。
REITを含めた「エクイティ」という言い方でもよいかもしれません。
しかし経済成長がすり減れば、必然的に株式の取り分も減ります。

株式の期待リターンが下がってしまうと、債券など他の資産と比べた時の魅力が減ります。
価格の振れ幅(リスク)が大きい分、リターンが減ってしまうと長期的な投資収益がマイナスになる可能性が高くなってしまうのです。

このあたりの事情は、モンテカルロシミュレーションの記事で詳しく説明しました。
投資に「妥当な期待」をして、将来をより「現実的に」考えよう! モンテカルロ・シミュレーションを活用する

③欲をかきすぎてはいけない世界で
株式のリターンは、僕ら兼業個人ファンド投資家の投資収益の核となる部分です。
株式のリターンが減る世界では、不動産のリターンもあっという間に食い尽くされ、同じように減ってしまいます。

そうなれば、もはや株式を多く保有する必要がなくなります。
投資ポートフォリオへの「期待収益」を減らして、設計し直さなければいけなくなるかもしれません。
投資家側の意識改革が必要になってきます。

以前ご紹介した、レイ・ダリオのオールウェザーポートフォリオのアプローチが重要さを増してきそうです。
【証券投資】いつも静かに笑っているために、ゴールド投資は必要か?

欲をかきすぎてはいけない世界が目の前まで来ているのかもしれません。

「低金利は貯蓄を困難にする」とはどういうことか?

短期金利はゼロあるいはマイナス数%から動かせず、長期金利も低迷が続く世界では、将来支払われる年金の原資を貯蓄したり、資本の蓄積(利息)で食べていくことがむずかしくなります。

金利がないということは、年金基金や銀行が債券で資金を運用する意味もなくなってしまうということです。

今現在は、かろうじて金利がある世界で購入した債券に一応の価格がついていますが、今後はいよいよ債券と現金が同等物となっていくわけです。

今後リタイアに臨む世代は、リタイア延期か年金目的の増税、年金積み立て(天引き)上昇、老後の所得減少などを受け入れていかなければなりません。

おまけに現役時代から老後の自分への所得移転が増えれば、現時点での消費が減ります。
消費が減れば経済は縮小します。
金利低迷のスパイラルはとどまるところを知りません。

それでは一体、どうしたらいいのか?

①株式の「選別」を行う
株式のリターンがすり減っていくとしても、現金や債券に比べてリスクが大きい以上、リターンが現金や債券と同等にまで落ち込むことはありません。
リスクが嫌われて売り込まれれば価格は下がり、将来のリターンは上がるからです。

そこでまず思いつくのが、株式の中でも「比較的リターンの高い株式」を選別するという手段です。

評価が割安になっている国の株式。
クオリティの高い株式。
小型かつ割安の株式。
ボラティリティの小さい株式。
競争の少ない市場で放置されている優良株式。

かねてから当ブログで追い求めてきた方法です。

インデックス投資で買ったきり放置(バイアンドホールド)が普及すればするほど、メジャーな株式のリスクプレミアムはすり潰されていきます。

そこからこぼれ落ち、足元で鈍く光っている株式を集めていきましょう。

②投資への「期待」を妥当な水準まで引き下げ、投入資金を増やす
毎月43000円を20年間、年率6%の収益が期待できる世界株式インデックスファンドに積立投資すれば老後資金の2000万円を作ることができる。

この計算が画餅にすぎなくなってしまう世界の話をしてきました。
20年後、結局得られたリターンが平均で年率3%であれば、1428万円にしかなりません。

仮に2000万円がどうしても必要ならば、債券やゴールドも含めたオールウェザーポートフォリオを構築し、期待リターンをはじめから妥当な水準(例えば3%)と想定して投入資金を増やしていくことが必要です。

20年間、年率3%の収益で積立投資して2000万円を作るには、毎月61000円の積み立てが必要です。
後になって取り戻すことができない「時間」という資産を最大限有効に生かすためには、「妥当な期待」が最も重要になります。

③「妥当なレバレッジ」を活用する
いぜん、レバレッジを活用することで収益を高めたバランスファンド「グローバル3倍3分法ファンド」について詳しく記事にしました。
徹底検証! 話題の投資信託「グローバル3倍3分法ファンド」に死角はないのか?

このファンドを詳しく検討した結果わかったのが、
コストが極めて低い方法で、少々の値動きでは破たんしないよう計算しつくされたレバレッジは、リターンを高めるのにきわめて有効であるということです。

レバレッジを利用した資産形成は、日本では以前から盛んにおこなわれてきました。
住宅ローンです。
破綻さえしなければ、レバレッジは資産作りに大いに役立ちます。

当ブログでは、信用取引・CFD・株価指数や債券の先物を使った、
・破綻しない
・面倒くさくない
・こわくない
適切なレバレッジの利用を今後のテーマの1つとして、こつこつ考えていきます。

④健康・人付き合い・勉強。投資で作れないリアル資産を作る
投資の収益、つまりストックの収益が見込みにくくなる世界では労働による収益、つまりフローを長く得ていくことが重要になります。

長く働ける健康。
折々支援してくれる友人知人。
キャリアチェンジを受け入れるキャパシティとなる勉強。

「人生100年時代」の元ネタ本である「LIFE SHIFT」は、今からでも遅くありませんので、ぜひ目を通していただきたいと思います。

人生を豊かにする「投資」の専門家
日野秀規でした。
ありがとうございました!

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