Gold Is The New Fixed Income
ゴールドは新たな「確定利付債券」だ

米国の投資情報サイト“Seeking Alpha”に、ゴールドの資産としての性質とその活用法についての興味深い記事が掲載されました。
著者はスイスで活動する個人向けのファイナンシャル・アドバイザーです。

記事の要点は以下の通りです。

①ゴールドを保有することの「機会費用」は今や存在しない
②ゴールドは債券が持つインフレリスクとデフォルトリスクがなく、むしろヘッジ手段として有効である
③保有する債券の一部をゴールドに振り替え、30%以上割り当てることを推奨する

補足を加えつつ考えていきます。

①ゴールドを保有することの「機会費用」は今や存在しない
機会費用とは経済学分野の非常にポピュラーな概念です。

「ある選択をするときに、それによってとり得なくなる他の選択肢から得られる最大の利得」を意味します。
使用した選択肢から得られる利得が機会費用よりも大きければ、その選択は合理的であるということになります。

この記事では債券の代替物としてのゴールドを論じているので、債券保有によって得られる確定利息がゴールドの機会費用にあたります。

もはや世界中で金利がマイナスに沈没しつつあります。
10年国債の金利をみると、多くの先進国で、利率から物価上昇率を引いた「実質金利」ではマイナスに落ち込んでいます。

つまり、機会費用は「ない」と言えてしまうというわけです。


米国・イギリス・日本・ドイツ・フランス・カナダ・オランダ・スイスで10年国債の実質金利がマイナスに落ち込んでいることがわかります。

一方、ゴールドの保有から発生する利得についてみてみると……
株価が極端に下落している時期には、債券と同等、あるいはそれ以上のパフォーマンスを示してきたといいます。



債券(青)は株価(赤)が大幅に下落した16回のうち、プラス10回・マイナス6回。
ゴールド(金)はプラス9回・ゼロ1回・マイナス6回。

ゴールドのほうがプラスもマイナスもボラティリティが若干大きいですが、特にプラスになるときの幅が大きい傾向を見てとれます。

ゴールドは、株価下落のヘッジ力は債券に勝り、機会費用も考慮する必要がない。
だから債券からゴールドへの大胆乗り換えを推奨します、という話です。

②債券のインフレリスク・デフォルトリスク
債券の利息は確定なので、インフレになれば価値が目減りします。
また経済が悪くなれば、社債はもちろん国債ですらデフォルトのリスクがあります。

ゴールドには強力なインフレヘッジ力があり、デフォルトする危険性はありません。

※ただし、①でディスインフレの状況がゴールドに優位である(機会費用がない)という筋立てだったのに②ではインフレヘッジをゴールドの優位性としているのは、若干の我田引水感があります。

③ゴールドに30%以上の割り当てを
多くの投資家にとって、債券はもはやゴールドよりも優れた利回りを提供しません。

そして、債券の利息がマイナスに落ち込んでしまうと、債券はもはや現金同等物になってしまいます。

株式と債券に分散したバランスポートフォリオが、小規模な株式ポートフォリオになってしまうのです。
そのうえ、その現金同等物はインフレの再燃、デフォルト・リスク、あるいは信用危機の際には損失を発生させる可能性を持っているのです。


この論理的な解決策は、たとえそれが30%以上の配分を意味するとしても、債券の大部分をゴールドに置き換えることといえるでしょう。

わかった。では、ふまえて、どうする?

筋立てには説得力を感じます。
実際、僕も自分のポートフォリオではゴールドを10%程度保有しています。
直近の相場ではすばらしいヘッジ力を示しています。

ゴールドを30%組み入れた、長期のポートフォリオをグラフで見てみましょう。


※Portfolio Visualizerにて作成


1994年からの25年では、ゴールドを30%入れたPortfolio 1と、株式債券を半々に組み合わせたPortfolio 2がくしくも同様の成績になりました。
標準偏差(リスク)はゴールドなしのほうが小さくなっています。

ただし、この期間は一貫して債券の金利がつぶれてきた期間です。

世界先進国10年国債の実質金利がマイナスに入り込んでしまったことを勘案すると、これまでの環境でトントンなら、これからは……という想像も働きます。

調べれば調べるほど、ゴールドの重要性が高まってきているという最近の印象を、より説得的に強める記事でした。

人生を豊かにする「投資」の専門家
日野秀規でした。
ありがとうございました!

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