世界に羽ばたく日本企業、なかでも株式市場では見過ごされがちな100銘柄に注目してみようのお話です。
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「NEXT NOTES ニッチトップ 中小型日本株(ネットリターン)ETN」(2050)が設定されました

本年7月10日に、野村アセットより新しい日本株式ETN「NEXT NOTES ニッチトップ 中小型日本株(ネットリターン)ETN」が設定されました。

米国調査会社のファクトセット社が野村證券と共同で開発した、中小型の日本株指数「ファクトセット・グローバル・ニッチトップ・ジャパンエンタープライズ指数(課税後配当込み)」に連動する商品です。

管理費用は0.85%とやや割高です。
分配金は出ませんが、「分配金から税金が控除された相当額」が指数に反映されるので、特に税金面で有利ということはありません。

ニッチ分野でトップシェアを占める企業で構成されるインデックスということですが、それにどんな意味があるのか、運用収益にどう影響してくるのか……

中小型優良株ポートフォリオという点では、ROEや営業利益を加味したJPX日経中小型株インデックスとの相違も気になります。
深掘りしていきます。

「ニッチトップ」とは何か?

まずは連動する指数の概要について、「ファクトセット・グローバル・ニッチトップ・ジャパンエンタープライズ指数(課税後配当込み)」のファクトシートにはこうあります。

ファクトセット・グローバル・ニッチトップ・ジャパンエンタープライズ指数は、特定のニッチ産業において高いグローバルマーケットシェアを誇る、日本の中小型株企業(SME) のパフォーマンスを追跡するために設計された株式ベンチマークである。これらのニッチ産業は消費者サービス、エネルギー、金融、医療、資本財・サービス、ビジネスサービス、素材、テクノロジーなど世界経済の幅広い分野に渡っている。

約750分類の細かな産業区分を用いて、世界中の企業の売上高を集計し、マーケットシェアの高い日本の中小型株100銘柄が選出されています。

大企業では、自転車部品のシマノやエアコンのダイキンなどが世界的なシェアトップで知られます。
「ニッチトップ」とは、グローバル大企業が参入しない「すきま」でトップであるという意味になります。

このETNが連動する指数にはこのような企業が含まれます。


個別の企業はもともと詳しくないのですが、アンリツ・ケーズ・日本製紙・古河電工など著名な企業も多いようです。

指数に含まれる100銘柄は、マザーズに上場しているミクシィを除くすべてが東証一部上場企業です。

はたして、「ニッチトップ」であることが運用成績にどのような意味合いを帯びてくるのか……
野村證券からはこのような見解が出ています。

日本には高い技術力を裏付けとした製品や独自のサービスを提供している企業が多くあります。しかし、当該分野で優位性を確保している企業の中でも、中小型株であるがために大型株と比較してアナリスト・カバレッジが薄いことなどから、市場からの注目度が低くなっている銘柄も少なからず存在していると考えられます。
東証マネ部! 2019年7月10日上場 2050:銘柄名 NEXT NOTES ニッチトップ 中小型日本株(ネットリターン)ETN
(アンダーラインは当ブログにて付けました)

中小型株であるがゆえに、大手機関投資家の目が行き届いていない可能性がある。
「トップシェア」という部分の値付けが適正にされていなければ、そこにアップサイドがあるかも……という考え方ができるわけです。

機関投資家の網からこぼれているという点は、ネグレクテッド・ファーム・エフェクトといいサイズ(小型株)の優位性として以前から挙げられている考え方です。

指数の過去の成績はこの通りです。


指数の正確な数値が入手できないため、グラフより目測で年率リターンを算出しました。
当然優秀な数値が出ています。

世界で高シェアを誇るピカピカ企業ぞろいということで、サイズに加えてクオリティ(収益性)に傾斜したポートフォリオとなっていると予想できますが……
ポートフォリオを詳しく見ていきます。

ETNとは何か?

ETNとは“exchange-traded note”の略です。
ETFが「ファンド」であることに比べ、ETNは「ノート」、つまり「証券」を売買しています。

「ファンド」は特定の指数に連動するよう、株式や債券などの資産を直接保有するポートフォリオそのものですが、「ノート」は違います。

特定の指数に連動させるところまでは同じですが、「ノート」は資産ポートフォリオそのものではありません。
「指数連動が保証された証券」が「ノート」の意味です。

指数連動、つまりその証券の価値を保証するのは発行元である「ノムラ・ヨーロッパ・ファイナンス・エヌ・ブイ」です。
野村證券の子会社ですので、その信用力は本体と同一です。

仮に野村證券が倒産するようなことがあれば、このETNが紙くずになってしまうこともあり得ます。
過去に、リーマンブラザーズが設定したETNが紙くずになった事例があります。

ここは注意したい点ですが、ただし、現状では野村證券の倒産を心配するのは現実的ではありません。
格付け会社5社の評価では、いずれも債務支払い能力は良好とされる投資適格の格付けを得ています。

ポートフォリオを深掘り

①評価指標チェック
選出された100銘柄は時価総額比例の割合で指数が算出されます。


評価指標にはとくに目立った特徴は表れていません。
PBR 1倍、PER 13倍前後という数値も、小型株ポートフォリオとしてはごく標準的です。
現状は穏当な割安水準であることがわかります。

②「マーケットシェアNo.1」とポートフォリオの関係は?
「マーケットシェアが高い企業を保有する」というコンセプトを他の商品にも見ることができます。
選定基準によってポートフォリオの内容は全く変わりますが、参考までに押さえておきます。

・folio「世界シェアNo. 1」
国内株式で少額から「テーマ投資」ができる独立系金融サービスが「folio」です。
そのなかに、「世界シェアNo. 1」というテーマがあります。

ポートフォリオはこの通り。

時価総額の制限をつけていないため有名大企業も多く含まれていますが、コンセプトはニッチトップと似通っています。

3年間の運用成績は6.32%(9月2日現在)と、日経平均の21.03%からだいぶ出遅れています。
どういうときに勝ちどういうときに遅れるのか、何とも読めません。

・ピクテ日本ナンバーワン・ファンド(毎月決算実績分配型)
日本国内の各分野で国内シェアがNo.1の企業を集め、そのうえでボラティリティが銘柄を除いています。
国内シェアが基準ですが、上位銘柄を見るとグローバル企業が多くなっています。


優良企業を集める基準としての「国内No.1シェア」ですが、過去10年の成績ではTOPIXインデックスファンドに年率1.4%ほど負けています。

シェアが高い≒運用成績良好につながらないことも多々あるようです。

③他のインデックスとの比較は?
当ETNがほぼ連動する「ファクトセット・グローバル・ニッチトップ・ジャパンエンタープライズ指数(課税後配当込み)」と、小型株指数・小型グロース株指数及びトータル指数の過去の成績を比較しました。

ニッチトップ指数が算出を開始されて以降の、主な高値・安値の山谷のタイミングで他の指数の数値も拾い、上昇・下落幅、これまでの運用成績等々を見比べてみます。


ニッチトップ指数の算出開始日である2015年1月30日を起点とします。
以降、2回の山(2015年12月3日、2018年1月23日)と2回の谷(2016年2月12日、2018年12月26日)、そして直近の2019年9月2日までの各期間の運用成績と、全期間を通じての運用成績を算出しました。

TOPIXの圧倒的な弱さに目を奪われますが……
優良な中小型株を選別しているという点で類似性があるかと思われたJPX日経中小型との連動性は高くありません。

ニッチトップ指数の推移は、比較対象の中ではJASDAQ指数と最も近いことがわかります。
値動きの相関係数やリスク/リターン比もニッチトップ指数とJASDAQ指数は非常に近いです。
JASDAQ市場に上場している銘柄は1つも含まれていないのですが、値動きはかなり近くなっています。

JASDAQ指数に連動する低コストのインデックス投信はありませんが、JASDAQ上場株式のみに投資するアクティブファンドがあり、安定的にJASDAQ指数を上回っています。

JASDAQオープン

ニッチトップ指数とJASDAQ指数の相関が非常に高いことを考えると、JASDAQ指数を安定的に上回ってきたJASDAQオープンが、長期的にニッチトップ中小型ETNをも上回る展開も考えられます。

まとめ

野村アセットより日本株式ETN「NEXT NOTES ニッチトップ 中小型日本株(ネットリターン)ETN」が設定されました。

米国調査会社のファクトセット社が野村證券と共同で開発した、中小型の日本株指数「ファクトセット・グローバル・ニッチトップ・ジャパンエンタープライズ指数(課税後配当込み)」に連動する商品です。

連動する指数「ファクトセット・グローバル・ニッチトップ・ジャパンエンタープライズ指数(課税後配当込み)」は、特定のニッチ産業において高いグローバルマーケットシェアを誇る、日本の中小型株企業(SME) 100銘柄で構成されます。

高い技術力を裏付けとした製品や独自のサービスを提供しながらも、中小型株であるがために大型株と比較して市場からの注目度が低くなっている銘柄のアップサイドを取ることが当ETNの狙いです。

「ファクトセット・グローバル・ニッチトップ・ジャパンエンタープライズ指数(課税後配当込み)」と、小型株指数・小型グロース株指数及びトータル指数の過去の成績を比較しました。

ニッチトップ指数が算出を開始されて以降の、主な高値・安値の山谷のタイミングで他の指数の数値も拾い、上昇・下落幅、これまでの運用成績等々を見比べてみます。


ニッチトップ指数の算出開始日である2015年1月30日を起点とします。
以降、2回の山(2015年12月3日、2018年1月23日)と2回の谷(2016年2月12日、2018年12月26日)、そして直近の2019年9月2日までの各期間の運用成績と、全期間を通じての運用成績を算出しました。

JASDAQ指数とはほぼ同等、JPX中小型株指数に対してはリスクを勘案したリターンでも上回ってきました。
日本の中小型優良株を買うには適した商品です。
景気回復期での伸びが期待できます。

人生を豊かにする「投資」の専門家
日野秀規でした。
ありがとうございました!

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