先進国経済が停滞し、中国の成長も鈍化するなか、さらなる成長を貪欲に求めるべきなのか……?のお話です。
いつもありがとうございます。

新興国のさらに周縁「フロンティア」市場とは?



長期金利が次々とマイナス以下に沈没していく先進国経済。
僕らの社会に横たわる「成長期待の低さ」を雄弁に物語ります。

一方、中国・ロシア・ブラジル・インドといった新興国は経済成長が著しく、2030年までにはドル建ての名目GDPで中国が米国を抜くとも言われています。
世界分散投資には新興国への投資が欠かせません。

ところが、その中国すら経済成長は年々鈍化しています。
MMTの実験場ともいわれる財政の支えで需要を作っていますが、バブル崩壊がやってくるのか、予断を許しません。

そうなれば世界の成長センターが1つ消滅することになります。
株式投資への影響は計り知れません。
さらなる成長が脈動する場所に、こつこつとチップを積み上げていきたいところです。

新興国よりもさらに経済成長がさらに発展途上の段階にある諸国を、大手指数算出会社MSCI・FTSEはともに「フロンティア」市場とよんでいます。
国内ネット証券会社では「iシェアーズ MSCI フロンティア 100 ETF」(FM)を通じて投資することができます。

クウェート、ベトナム、モロッコ、ケニア、バーレーン、ナイジェリア、ルーマニア、バングラデシュ、オマーン、カザフスタン、ヨルダン、スリランカ、モーリシャス。
現状でiシェアーズ MSCI フロンティア 100 ETFに含まれる13か国です。

中東4か国、アフリカ3か国、東南~南アジア3か国という分布になっています。
クウェート・ベトナム・モロッコの上位3か国で、保有する株式の50%を超えます。

フロンティア株式の特徴とは?

IS IT WORTH INVESTING IN FRONTIER MARKETS?
フロンティア市場は投資に値するか?

世界の銀行向け情報サイト「International Banker」に掲載された、フロンティア市場に投資する複数のファンドマネージャーへの取材記事です。

フロンティア市場への投資について、その価値とリスクがわかりやすくまとめられています。
以下に要約します。

①フロンティア株式の魅力
・フロンティア株式は売買があまり活発でないがゆえにまともな価格がついていない可能性があり、そこで利益を得られる機会がしばしばある
・目下の新興国株式は割安だが、フロンティア株式はより魅力的な水準にある
・フロンティア諸国は平均して新興国や先進国よりも高い経済成長率を示す
・フロンティア株式は先進国株式や新興国株式との相関が弱い傾向があるため、投資ポートフォリオの分散に役立つ。

②フロンティア株式のリスク
・政情不安や不十分な市場インフラ・市場の透明性・通貨の変動・石油など特定のセクターに依存している経済のぜい弱さといったリスクがある
・このようなリスクは避けられないので、フロンティア市場はポートフォリオのごく一部にとどめておくべきといえる

成長性や割安性といったメリットが明確であれば、分散のためにフロンティア株式にポートフォリオの一部を割り当てることは合理的です。
コストが低く簡単な投資手段があるならば、利用しない手はありません。

新興国株式と比較してみる

上の記事の通り、フロンティア株式は本当に投資する価値があるのか?
評価指標を確認していきます。

①リスク指標


フロンティア株式の指数であるMSCI Frontier Markets Indexと、新興国株式の指数であるMSCI Emerging Markets Indexを比較します。

iシェアーズのETFが連動する指数はMSCI Frontier Mrakets 100 Indexであり、新興国株式も小型株を含むMSCI Emerging Markets IMI Indexを比較対象とするのが適当ですが、それぞれ長期の数値がとれる大・中型株の指数で比較しました。

フロンティア株式のほうがリスク(標準偏差)が小さく、値動きはマイルドです。
リターンはフロンティア株式のほうが小さかったものの、リスクも小さいので分散には使えます。

2005年~2018年の成績に基づいて試算すると、新興国株式との組み合わせでは太字の4パターンが相性が良いです。


100万円を30年間運用した場合の試算です。
計算は「ファンドの海」の長期投資予想/アセットアロケーション分析をお借りしました。

リターンは新興国株式が大きいですが、フロンティア株式を適宜加えることにより分散効果が発揮されます。
「70%の確率で得られる運用成果」はフロンティア株式を20%加えた時が最も大きく、元本割れ確率が最も小さくなるのはフロンティア株式を半分加えた場合となります。

②評価指標


IシェアーズMSCIフロンティア100 ETF(FM)と、iシェアーズ・コアMSCIエマージング・マーケットETF(IEMG)の比較です。

PBRのみ新興国のほうが割安を示していますが、それ以外の指標はフロンティアのほうが割安となっています。

フロンティア株式のほうが、少ない資産が高評価を受けているということで、資本不足で産業がまだ高度化されていないということなのでしょうか……よくわかりません。

PEGレシオが示すとおり、フロンティア株式は高成長が期待されていながら株価は割安水準にあります。

その背景には「カントリーリスク」があるのかもしれません。

「カントリーリスク」を保険会社に学ぶ

海外の取引先の倒産リスクをヘッジする、「取引信用保険」という商品があります。
法人向けの保険商品です。

その分野でグローバル展開しているフランスの取引保険会社「コファス」が、世界各国のビジネスリスクを格付けし、発表しています。

固有の経済事情や地政学、民族等、その国特有の事情によりビジネスや市場に支障が起こる可能性が、投資分野でいうカントリーリスクです。

コファスのカントリーリスク評価は、ウェブサイトで太っ腹にもすべて無料で公開されています。
カントリーリスク評価

コファスのカントリーリスクマップによる各国のリスク評価は以下の通りです。


コファスのカントリーリスクは、マクロ経済・国家/民間債務、内外政治などを評価し格付けされています。
A1~A4は適格で、B~Eにかけてリスクが高くなっていきます。

日本や米国といった先進国はA1で非常に低く、有力な新興国は軒並みリスクはあるという評価です。
フロンティア諸国は評価が入り混じっていますが、クウェート・ベトナム・モロッコ・ケニアといった上位国は有力新興国と同等か、むしろカントリーリスクは低いという評価です。

格付けB以上の国で保有する株式の72.7%を占めるので、カントリーリスクの観点からは、フロンティア株式が新興国株式よりリスクが高いとは一概には言えません。

市場の透明性・流動性や、財務報告の正当性などはカントリーリスク評価ではわかりませんが、恐れすぎる必要はないといえるのではないでしょうか。

まとめ

フロンティア株式は、この先の経済成長期待からすると割安水準にあります。
カントリーリスクは新興国に比べて高いとは言えません。
インデックスの評価では、リスクは過去を見る限りむしろ新興国より小さくなっていました。
最大下落幅でも新興国とほぼ同等です。

新興国の一部を振り替えてもよいと考えます。
僕は、割安水準を勘案して積極的に投資すべく、ウォッチング対象に入れています。

投資手段

①投資信託
HSBC ニューフロンティア株式オープン
MSCI Frontier Markets Indexに含まれている国以外に、フィリピン、コロンビア、エジプト、パキスタン、ペルー、アラブ首長国連邦、カタールなどに約30%程度投資しています。

これらの国はMSCI Frontier Markets IndexからMSCI Emerging Markets Indexに鞍替えした国々ですが、アクティブ投信なので必ずしも著名な指数に合わせる必要はありません。

フロンティア株式に含まれる国が、経済成長や市場の整備が評価されて新興国インデックスへ移ることがあります。
そうすると、フロンティア株式インデックスで数十パーセントを占めていた国の株式が一斉に消えてしまうことになるのです。

かつてのアルゼンチンがそうでした。
そうなると、指数を参照して行う投資は継続性が問題となってきます。
アクティブ投資なら、継続性を勘案した投資も自在です。

そのため、フロンティア株式ではアクティブ運用を利用する価値があるという声があります。
英国モーニングスターの記事です。
フロンティア市場投資:なぜアクティブ投資に意味があるのか

ただ実際のところ、HSBC ニューフロンティア株式オープンの元ファンドであるHSBC Global Investment Funds – Frontier Markets BCの運用成績が、MSCI Frontier Markets Indexとほぼ同程度です。
日本法人が信託報酬を上乗せするので、コスト面でさらに不利になるのは確実です。

海外ETFに投資した方が無難といえます。

②海外ETF
iシェアーズ MSCI フロンティア 100 ETF(FM)
国内ネット証券で購入できます。

コスト面では有利ですが、上でふれたとおり、長期では成長した国が新興国に格上げされていなくなってしまうので、低成長国の吹き溜まりになってしまう可能性もあるかもしれません。
運用成績や評価指標を折々チェックしておく必要があります。

HSBC ニューフロンティア株式オープンとiシェアーズ MSCI フロンティア 100 ETF(FM)の比較表です。


年1.4%の経費差は小さくありません。

人生を豊かにする「投資」の専門家
日野秀規でした。
ありがとうございました!

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