「あおぞら投信」柳谷会長・大久保部長と1時間半、こってりお話ししました。 ①「あおぞら・徹底分散グローバル株式ファンド(愛称・てつさん)をなぜ知ったのですか?」
の続きです。

あおぞら投信の投資信託「あおぞら・徹底分散グローバル株式ファンド(愛称・てつさん)」を当ブログで紹介したところ、記事を読んだあおぞら投信の柳谷会長・大久保部長の来訪を受けました。

あおぞら投信株式会社取締役会長・柳谷俊郎氏については、あおぞら投信のウェブサイトで動いている姿を見ることができます。
個人資産運用の新潮流 資産運用会社の哲学

そこでまず「てつさん」の急所である、バンガードのファンドに運用成績が負けている現状について突っ込みを入れたところ……
こんなふうに切り出されました。

「バリューが弱かったから市場平均に負けた、というのでは説明したことになりません。ディメンショナルも我々も、そういうレベルの話でとらえてはいないのです」

煙に巻いている? どういうレベルの話なんだろうか?
柳谷さんが続けます。

「てつさん」がよって立つものとは?



「まず、このファンドがよって立つものは何かというと……
①クオンツではない
②フューチャーバリューをとらえていく
③ディメンショナル・ウェイ
以上の3点です。

クオンツではないというのは、単にビッグデータを処理して取り出した『相関』を使って運用しているわけではない、ということです。

ある期間のA資産とB資産の値動きを折れ線グラフに表すとぴったりと重なる、相関係数が0.98だから……というような分析は、実際には何の関係もないものに疑似的な相関を見出させてしまうことがあり得ます。

たとえば……
かき氷の売れ行きと海難事故の件数を折れ線グラフに表すと形状がよく似ている、ということは、かき氷の販売を規制すれば海難事故が減るはずだ!
これが疑似相関です。

ディメンショナルは、経済学者が長期間のサンプルを実証分析することで見出した『株式が富を形成する源泉』に根拠をおいた投資を行っています。
その源泉が、サイズ・バリュー・収益力なのです。
データマイニングに頼っているわけではないんです」

まずは「科学的な根拠のある投資」をしているという事実をしっかり押さえましょう、というお話でした。
続いて話は「フューチャーバリュー」に及びます。

「もちろん未来のことは誰にもわからないというのは大前提。
ですが、『根拠のある投資』であるということをご理解いただければ、長期間では有利な資産形成ができることが腑に落ちるのではないかと思います。

たとえ話をしてみましょう。
サイズ・バリュー・収益力という『源泉』からは、これまでの長い期間、ほかの温泉よりたくさん『お湯』が湧いたという実績があります。
それらの源泉は厳密な調査で埋蔵量があることが確認されており、今後もたくさんのお湯が湧く期待が持てます。

ただし、お湯が豊富に噴出する時期もあれば、ちょろちょろとしか流れ出ない時期、そして干上がってしまう時期もあります。
そして事前に『噴出』と『ちょろちょろ』『干上がり』のタイミングを知ることは残念ながらできないのです。

長期間、常に源泉のそばで、じっとお湯を受ける構えを取っていてもらう必要があります。
それが『てつさん』を持ち続けていただくということになります。

そのために、私どもはできる限りコストを抑えました。
長期間の保有にマイナスの要素はできる限り排除し、フューチャーバリューをとらえる『器』として使っていただく。
私どもは『てつさん』を、このようなものとしてご提供しているわけです」

将来のことはわからないがゆえに、「科学的な根拠のある投資」にロングライドしてもらうためにこしらえた乗り物が「てつさん」である、というお話です。

最後の「ディメンショナル・ウェイ」ですが、これまでの2点とは少し性質の異なるお話です。
ディメンショナルという、いわば「進歩を内包する」組織との協同について語っています。

「ディメンショナルが著名な経済学者・市場研究者をアドバイザーとして擁している以上、それまでの投資運用理論を書き換える研究成果が世に出れば、ディメンショナルが行う運用も当然変わってきます。

ディメンショナルが発足した当初は、株式の収益(プレミアム)の源泉は『市場ポートフォリオ』『サイズ』『バリュー』の3ファクターとされていました。
ファンドもこれに基づいた運用を行っていたわけです。

その後、モデルは5ファクターにまで拡張されました。
その成果を取り入れるべく、ディメンショナルは新たに『収益性』ファクターを追加したファンドを世に送りました。

今後も、こういった学術研究による革新は続きます。
そのつど、ディメンショナルも、我々も変わります。

たゆまぬ株式市場の研究成果を取り込み、株式のプレミアムを最も効率的にとらえるファンドへと革新し続けていくこと。
これがディメンショナル・ウェイです。
『てつさん』は、ディメンショナル・ウェイと日本の個人投資家の橋渡し役なのです」

「市場との共生」と、運用者・販売者としての課題

「バリューが弱かったから市場平均に負けたんですか?」という素朴な問いから、話は「てつさん」というファンドの存在意義に及びました。

僕が「てつさん」を取り上げた記事を書くきっかけとなった、このファンドの魅力を改めてわかりやすく整理してもらえたように感じます。

しかしながら、実は僕が以前に記事を書いていた時にも感じていたことなのですが……。
「投資マニア」でないような一般の投資家には、単に「能書きばかり多い投信だなぁ」と思われてしまうのではないか、という懸念がありました。
その辺はどうでしょう?

「そういった部分の販促のむずかしさは、私どもも常々感じているところで……『バリューが弱かったから負けた』という単純なストーリーも、半分は本当なわけですから。

結局は……繰り返しになる部分もありますが、富を生み出しているのはあくまで『市場』であり、市場と共生していくのが我々のやり方だということなんです。

バリューの強弱というような相場の『流れ』が市場には常に存在します。
定量的なモーメント、力の方向といいますか。

一方で、テクノロジーの進展による『トレーディングスタイルの変化』や、たとえば近年の金融庁が音頭を取って大規模に『貯蓄から投資へ』とやったことで長期投資が広まっていくというような『投資家の質の変化』といった、より長期的な、定性的な変化もあります。

学術研究の実用化という手段を通じて、『相場の流れ』と『株式の価値を決める要素の大きな変化』という時間軸や性質の異なる事象をいかにアウフヘーベンしていくか……

これがディメンショナルの課題であり、私どもも、情報やストーリーとしてお客様にディメンショナルの投資をできるだけわかりやすくお伝えしていくために、共有していくことだと思っています」

なるほど……
「てつさん」という商品を購入する入口は、あくまでも「市場平均インデックス投資より長期間では有利です」という触れ込みです。
その看板は一番大事です。

ただ、その先にある「市場の深淵」みたいなものにふれるきっかけと考えると、短期の勝ち負けを気にせず保有できるようになるかなぁ……?
というようなことを思いました。

そのためには、定期的にあおぞら投信の取り組みや、ディメンショナル・ウェイを発信するコラムなどがあるといいのになぁと思います。
古くはさわかみ投信の、そして現在におけるひふみ投信の強みはまさにそういうところにあるわけで。

この後、僕から柳谷さんにもう1つ質問をぶつけました。
あおぞら投信の取締役会長に対してでなく、プロの債券トレーダーであった柳谷さんに聞きたかった質問です。

いま、一番アツい問いだと思います。
それは、「金利がつぶれていく世界で、資産運用はどうなるのか?」です。

次回に続きます。

※今回の来訪に関して、一切の金銭や便宜の供与はありません。

人生を豊かにする「投資」の専門家
日野秀規でした。
ありがとうございました!

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