マレーシアの株式が割安領域に入りつつあります。
マレーシア株式投資について徹底検討しました。

アセアンか、マレーシアか?



自然とニュースが目や耳に入ってくる米国や中国、ヨーロッパ諸国とは違い、知ろうと思わなければマレーシアという国についての印象は持ちにくいと思います。

マレーシアは日本の南西に位置し、アセアン(東南アジア諸国連合)の一員です。

タイに端を発する1997年のアジア通貨危機では、韓国やインドネシア・ロシアが大打撃を受けるなか、ひとりワシントン・コンセンサス(IMFが主導する緊縮・新自由主義志向経済改革路線)に取り込まれることなく自力で乗り越え、着実に成長を重ねてきました。

マレーシア飛躍の立役者である指導者マハティールは、2018年に90歳を超えた身で首相に返り咲きました。
消費税を撤廃し売上税に移行させたことでも知られます。
低迷する経済下で消費に懲罰を与える日本の指導者たちとは一味も二味も違います。

マレーシアは株価指数を算出するうえでは新興国に分類され、全世界株式(iシェアーズACWI ETF)では0.3%、新興国(iシェアーズIEMG ETF)では2.14%を占めます。

マレーシア株式の割安性に着目し、単一国ETFを利用して投資する方法と、成長するアセアン諸国に一体で投資する方法があります。
まずはアセアン諸国の株式の特徴をざっくり眺めてみます。

アセアン株式の現状をさらっとひとまくり

マレーシアはアセアンの中でも一人当たりGDPでシンガポール、ブルネイに次ぐ富裕国で、その額は11,000ドルを超え世界平均を上回っています。
日本で投資できるアセアン諸国の中では、一人当たりGDPで最大のシンガポールが約65,000ドル、最小のベトナムが約2,500ドルとかなりのばらつきがあります。

アセアン各国株式の近年の推移(ドル建て)はこの通りです。

青:米国 桃:全世界 黄:タイ 緑:フィリピン 黄緑:シンガポール 橙:マレーシア えんじ:インドネシア 水色:ベトナム
約9年間で、タイの+90%~ベトナムの-21%までかなりのばらつきがあります。
マレーシアは-3.1%と近年はふるいませんでした。

アセアンというまとまりはあくまでも地政学上のものであり、経済的な共通性・同質性はあまり感じられません。

各国株式の評価指標をまとめました。
Research Affiliatesが算出するCAPEと期待リターンでは、シンガポールとマレーシアが近い数値を示しています。



PERを利益成長率で割ったPEGレシオを見てもわかるように、マレーシアとシンガポールはこの先の低成長が見込まれるため株式の評価が低迷し、バリュー株の特徴を示しているわけです。
配当利回りの高さ、PBRの低さも共通しています。

下段のインドネシア・ベトナム・タイ・フィリピンは、マレーシアに比べると成長株よりの特徴が表れています。

上段のASEAN ETF(国内ネット証券では購入できない)の評価指標は、合わせて50%程度を占めるマレーシア・シンガポールに近い数値を示しています。

こうした事情を踏まえて、実際の投資方法を検討していきます。

マレーシア株式への投資方法

マレーシア株式に投資するには、①単一銘柄・②投資信託・③ETFを購入する方法があります。

①マレーシア個別株式
SBI証券、楽天証券で43の個別銘柄が購入可能です。

②アセアン投資信託・ETN
モーニングスターで「東南アジア」「アセアン」と検索すると40数件の投資信託がヒットします。
そのなかでもマレーシア株式の保有割合が多い2商品と、ETNをピックアップしました。

・アセアン成長国株ファンド
マレーシアの割合は15%です。
アセアン諸国の株式で、競争力と財務健全性にすぐれたクオリティ企業に投資します。
実際には経費率の高さもあり、運用成績はあまりふるいません。

・アセアン真成長株式ファンド
マレーシアの割合は14%強となっています。
事業の安定性と成長性に着目し、三菱UFJ信託銀行シンガポール支店の投資助言に基づき投資します。
現地情報を活かした投資が行われるわけです。

が、実状は経費率の高さもあり運用成績はあまりふるいません。

・NEXT NOTES STOXX アセアン好配当50 ETN
「STOXXアセアン好配当50指数」に連動します。
シンガポール、マレーシア、タイ、フィリピン、インドネシアの上場株式のうち、配当利回りが高い50銘柄を構成銘柄とする時価総額加重型の株価指数です。

ETNについては以前、別の商品を紹介した時に詳しく説明しました。
現状では投資家のほうで、特にETFとの違いを意識する必要はありません。
徹底解析! NEXT NOTES 低ベータ50(ネットリターン)ETNは「不穏な時期に頼れる相棒」

配当利回りの高い銘柄を集めたため、シンガポール・マレーシアの比率が高めになり、その割合は合計で6割を超えています。
マレーシアの割合は約16%です。

過去5年の成績では、ライバルとなる投資信託に年率2~3%弱の差をつけています。
今後もこの傾向が続くなら、長期では大きな差となります。
経費率の差がかなり効いています。

この中では東証ザラ場での売買に不慣れや不都合がなければ、商品性はNEXT NOTES STOXX アセアン好配当50 ETNがダントツにすぐれています。

③マレーシア株式ETF
・NEXT FUNDS FTSEブルサ・マレーシアKLCI連動型上場投信(1560)
東証に上場しているETFです。

FTSEブルサ・マレーシアKLCI指数は、マレーシアを代表する株価指数です。
マレーシア証券取引所に上場する株式のうち、時価総額が大きく流動性の高い上位30銘柄で構成されています。
ダウ30や日経225と似た意味合いの指数です。

普通株と同様に売買でき、信用取引の担保にすることもできます。
税金の面でも国内株式同等に扱われるので不便がありません。
マレーシア株式に絞って投資するなら、この商品が最も手軽です。

・iシェアーズ MSCI マレーシア ETF(EWM)
国内ネット証券で購入できる海外ETFです。
44銘柄を保有する時価総額加重型の指数連動商品です。

手数料はもっとも安く長期では有望ですが、売買や税金の取り扱いを含めた手軽さでは国内上場ETFには劣ります。

大金を投資するならiシェアーズ MSCI マレーシア ETF(EWM)のコスト優位は光りますが、一般個人投資家の分散投資の一環として行うならば、NEXT FUNDS FTSEブルサ・マレーシアKLCI連動型上場投信(1560)で十分です。

以上を特徴でまとめると以下の通りです。

・投資タイミングをはかってマレーシア株式に集中投資するなら「NEXT FUNDS FTSEブルサ・マレーシアKLCI連動型上場投信(1560)」
・将来的な発展も見据えて、アセアン諸国に幅広く投資するなら「NEXT NOTES STOXX アセアン好配当50 ETN」
・低コスト投資にこだわるなら「iシェアーズ MSCI マレーシア ETF(EWM)」
・シンガポールも併せて、現時点の「割安」=長期投資での優位にこだわったバリュー投資派なら「NEXT NOTES STOXX アセアン好配当50 ETN」

 

マレーシアの経済環境まとめ

投資の前提条件となる東南アジア/マレーシア経済についてまとめました。

ただし、一つ一つに頭を悩ませても未来のことはわからず投資成績が改善するわけでもありません。
ここで抑えた点に破壊的な事情変更が生じた際には、投資方針の変更を考慮します。

①東南アジアについて
・域内10か国、人口約6億人の人口稠密地域
・ヨーロッパ(EU28か国)とほぼ同じ面積。中国の約半分だがインドは超えている
・1967年に東南アジア諸国連合(ASEAN)設立
・1992年にAFTA(ASEAN自由貿易地域)創設
・人口増:フィリピン、ベトナム、インドネシア
・GDP:インドネシア、タイ、マレーシア、シンガポール、フィリピンの順
・域内格差、国内格差が大きい。貧困度はラオス、カンボジア、インドネシア、フィリピンの順
・ACFTA(中国ASEAN自由貿易協定)で、中国と各国の間ではほとんどの貿易品の関税が撤廃されている
・2050年の予想GDPではインドネシア16位、マレーシア20位、タイ22位(それぞれ2010年には21位、30位圏外、29位)
※以上は「地図で見る東南アジアハンドブック」(原書房)より

②マレーシア経済について
・人口3,239万人、33万平方キロメートル(日本の0.9倍)
・工業国(GDPの4割)。半導体輸出が柱。ASEAN域内貿易で3割強。
・輸出立国といわれていたが、近年ではサービス業の外資開放、ITインフラの整備、労働者のスキルアップにより、内需主導型成長への転換を成し遂げた。
・アセアンのなかではシンガポールに続き、高所得国入りが目前に迫る成功をみせている。
・消費者物価上昇率は2%前後で安定しており、失業率も安定して3%前後と低い。平均年齢は28.5歳(2015年)と若い(日本は46.5歳)。
・華人(2割)とマレー人(6割)の間に大きな格差が存在するが、その是正が国是として長年取り組まれている。この結果として、マレーシアの経済政策は近隣諸国と比べて「格差是正による国民の統合」という軸がぶれることなく、長期にわたって安定的かつ適切に運営された。
・しかし、2013年頃から不安定化の兆しが見られるようになった。大づかみにいえば、近年のマレーシア政府の政策は、格差が縮小したことで軸を喪失しつつあり、かつてのインドネシアやフィリピンに似た短期的な利益を追求するものへと変化している。南欧や南米諸国の経験を踏まえると、ポピュリズムへの傾倒を強めた国家の先行きは暗い。
・2028年まで年率5%程度の経済成長が見込まれている。
・「中進国の罠」にはまりつつあるという見方もある。
・一例として、マレーシアの半導体産業は確かにプレゼンスを高めてきている一方、半導体受託生産世界一位の台湾セミコンダクターや、サムスン電子に比べると実力的にはまだ劣り、しかも差がむしろ広がりそうな気配になっているという。

いかに投資するか?

アセアンという枠組みをあくまでも地域的なまとまりと考え、経済・株式市場の同質性が思いのほか薄い点をふまえるなら、マレーシアの個別株式やマレーシア株式ETFを利用する方法があります。

マレーシア株式の低評価に着目して投資に踏み切る際には、この方法がベストです。
SBI証券・楽天証券でマレーシア株式個別銘柄の購入や、東証上場のNEXT FUNDS FTSEブルサ・マレーシアKLCI連動型上場投信(1560)の利用がおすすめです。

マレーシア株式とシンガポール株式との共通性に着目し、バリュー投資の一環として行うなら、アセアン地域にまとめて投資する「NEXT NOTES STOXX アセアン好配当50 ETN」の利用が望ましくなります。

日本株同様に扱うことができ面倒がありません。
また、連動する指数が現地配当課税を差し引いた配当込み指数(ネットリターン)なので、自分の手で配当再投資をする必要がなくムダがありません。

マレーシア株式とシンガポール株式がともに割安の折にはアセアン好配当50 ETNを購入し、マレーシア株式のみ特に割安に突っ込んだ際にはFTSEブルサ・マレーシアKLCI連動型上場投信(1560)を購入するといった柔軟な対応が可能です。

人生を豊かにする「投資」の専門家
日野秀規でした。
ありがとうございました!

(参考文献)

マレーシア投資環境 2019年5月
曲がり角にあるマレーシアの経済政策運営
2020 年までの先進国入りを目指すマレーシアの経済産業政策の歩み
マレーシア経済の現状と今後の展望

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