米国の投資アドバイザー向け情報サイト“ThinkAdvisor”に掲載された記事です。
Ritholtz: 5 Reasons Investors Are Chasing Risk
投資家がリスクを追いかけている5つの理由
ブルームバーグでコメンテーターを務めるバリー・リトルツによる記事です。
投資家が「合理性のない過大なリスク」を取ってしまう理由を考察しています。
紹介しつつ掘り下げていきます。
過大なリスクテイクには理由がある
記事はまず、合理的で穏当な投資手法を端的にまとめます。
手法や手続きをなるべくシンプルにまとめ、コストを抑え、分散し、長期的に投資する。
統計的に言えば、これはよい投資結果につながる可能性の高い手法である。
たとえば、自分のリスクや投資期間などの質問に答えていくことで、適したバランスファンドを推薦してくれる「ポートスター」のようなアドバイザーを利用した投資。
あるいは、低コストインデックス株式ファンドと現金預金の割合を決めて、こつこつ積み立てる投資。
こういった方法がそれにあたります。
それにもかかわらず、より高い(場合によってははるかに高い)リターンの理論的可能性を保持する高リスク戦略に走る人がいる。
例としてレバレッジの使用、商品への投資などがあげられています。
自分などはまさにこれで……
自分なりに冷静にリターンとリスクを判断しての投資ですが、「アセットアロケーション固定低コストインデックス長期分散投資」を合理的とする立場からは、過剰なリスクテイクになっているわけです。
自分には気づけていないリスクがあるかもしれません。
記事を追っていきます。
投資家をむしばむ5匹の魔物「強欲・楽観・誤解・無知・過信」
記事であげられている理由はこの通りです。
②誤解のリスク
③うまくいった手法・資産を追いかける習性
④宝くじへの投資
⑤市場サイクル後期の自信過剰
1つ1つみていきます。
①期待リターンの低下
(抄訳)
市場予測は不可能だが、現状の評価は将来の期待リターンについてのガイドラインを提供する。
米国株式は高評価である、米国債と社債は第二次世界大戦後で最低の利回りとなっている。
投資家は期待リターンを下げる必要があるが、受け入れられずより多くのリスクを負うことでリターンを搾り取ろうとする者も多い。
最近では年金基金や保険会社、運用難に苦しむ地方銀行などが「代替投資」に手を出しているという記事をよく目にします。
超長期債券・レバレッジドローン・プライベートエクイティ・ベンチャーキャピタルなどへの投資です。
市場サイクルの最末期に、搾りかすが一般個人に回ってくる可能性があります。
ババ抜きでジョーカーを押し付けられるカモが個人投資家です。
兼業個人長期投資家は、投資範囲を普通株・投資適格債券・REIT・商品インデックス・ゴールド等の伝統資産にとどめておきましょう。
②誤解のリスク
(抄訳)
リスクという言葉の意味を要約すれば「投資の実収益が期待収益を下回る可能性」という風に表現できる。
リスクとリターンは同じコインの両面であり、パフォーマンスの大きな向上にはパフォーマンスの大きな低下の可能性が伴う。
期待リターンが高い資産に賭けておけば、〇割引でもそれなりの運用成果に……となるかどうかはわからないのが投資ということです。
リスク・リターン比が効率的な資産(株式インデックスや投資適格債券など)をポートフォリオの「核」とすることで、資産全体での期待リターンの実現可能性を高めていきましょう。
③外挿のリスク
(抄訳)
投資家は直近うまくいった事象や手法を追いかける。多くの場合、収益のほとんどが食われつくした後「夢のあと」への資金投入となることが多い。
ヘッジファンドやビットコインなど、大規模な資金流入が起こっている資産では多くの場合、“easy money”の局面が終わったことを意味する。
既知の現象を将来予測にそのまま適用してしまうことを「外挿」といいます。
長期投資では、勇気をもって逆張りに徹しましょう。
④宝くじへの投資
(抄訳)
勝者独り占めの現象は、花形スポーツ選手やポップスターの例だけではない。
ベンチャーキャピタル・プライベートエクイティ・ヘッジファンドなどの投資でも同様に、少数の投資会社が利益の大部分を占めている。
数億円の投資資金を用意して、事前に勝者を知ることができれば宝くじは当たるが、そんなことは不可能である。
ソフトバンク・ビジョンファンドの体たらくを見れば一目瞭然です。
普通株・投資適格債券・REIT・商品インデックス・ゴールド等の伝統資産に分散投資しましょう。
⑤市場サイクル後期の自信過剰
(抄訳)
リーマンショックから10年、当時得た痛みと教訓の両方を忘れるのに十分な時間が経過した。
株式から離れると誓った投資家は、今や危険な混雑した取引に飛び込み、ここ数年株式にフルベットしてこなかった自分を責めている。
このような状況に疑いを持つなといったってムリだ。
株式市場の楽観ムードに流されてはいけません。
自分のリスク耐性に見合ったポートフォリオを守り続ける。
または、資産の評価(割高・割安)を確認しながら時間を分散して資金を投入する。
こうした規律のある投資を淡々と続けていきましょう。
兼業個人投資家が最も気をつけないといけないのは「期待リターンの低下」である
①リスクが耳元で「逸脱」をささやき始めるとき
もう一度確認しておきます。
②誤解のリスク
③うまくいった手法・資産を追いかける習性
④宝くじへの投資
⑤市場サイクル後期の自信過剰
どれも大事な観点ですが、隙あらば足をすくいに来る最も危険なリスクは「①期待リターンの低下」です。
②~⑤は、投資範囲を普通株・投資適格債券・REIT・商品インデックス・ゴールド等の伝統資産にとどめ、ポートフォリオを淡々と守っていけば足を取られることはありません。
しかし①は「認識の問題」です。
これこそが②~⑤のリスクへの入り口といえます。
リーマンショック以降、世界株式分散投資は波をやりこなしつつ、10年にわたって右肩上がりで収益を拡大してきました。
とくに2011年にそれまでの2年にわたるジグザグを抜けてからは、極めて順調でした。
株式の評価はすっかり割高になっています。
この間、株式だけでなく債券も順調に上がり、金利は世界先進国各国で史上最低にまで落ち込みました。
この先の長期投資は、これまでのようにはいきません。
このことが腹落ちしている兼業個人投資家は多くありません。
この先、たとえば10%~20%程度の下落があったり、数カ月にわたってじわじわ下げていくといった相場の渦中で不安にさいなまれた時、②~⑤のリスクが耳元で規律からの逸脱をささやき始めるわけです。
②「期待リターンの低下」への対処、3ステップ
現状、全世界の株式は割高です。
過去の株価の評価データを大きさ順でならべて100個に区切ってみると、現状は下から70番目に位置します。
最割安から70番目、最割高から30番目の位置です。
明らかに割高水準です。
株価が割高の時期に資金を投入しても、儲かりにくいです。
金利が低い時期に債券を購入しても、価格が下がる可能性が高いです。
くり返しますが、
この先の長期投資は、これまでのようにはいきません。
対応は3ステップで行えます。
②割安な資産に傾斜配分する。
③規律ある投資を継続しながら、経済ショックで極度な割安が来た時には資産を大胆に傾斜配分し、さらに確信が持てた際にはレバレッジを利用する
不穏になってきた時におっとり刀で何をしてもうまくいくものではありません。
居心地のいい今の時期に、合理的・冷静な判断力で、暴風雨に備えた行動プランを策定しておきましょう!
人生を豊かにする「投資」の専門家
日野秀規でした。
ありがとうございました!
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