昨年晩夏に調整が入って以来、世界の株式市場ではリスクオンの風が吹いています。
米国・新興国・欧州・日本のいずれも、円建てで16~22%程度上昇しました。


青:米国 緑:新興国 黄:欧州 橙:日本

製造業の先行き不透明や米国株式の過熱を横目に見つつ、投資家は前向きです。
「持たざるリスク」を意識しているようにも感じます。

とくに米国株式市場は“Extreme Greed”(著しい強欲)に包まれています。


このような市場環境の中、現金保有の意義を強調する記事が米国の投資情報サイト“Seeking Alpha”に掲載されました。
著者は富裕層向けの投資アドバイザーで、長期投資を専門にしています。
The Ultimate Argument For Holding Cash
現金保有の究極の論拠

短期ではこの5カ月、長期では10年以上にわたって吹く追い風の中、規律を守って現金を保有し続ける意味とは?

非常に役に立つ記事なので、要点をまとめていきます。

リスクオンが5年続いたとしても……?



①「ドットコムバブル期」に似ている米国株式市場
現在の米国株式市場は、「ドットコムバブル期に似てきた」と言われることが多くなってきました。

当ブログでも少し前の記事でふれています。
S&P500 3,200の地点から米国の成長にベットするなら、インデックスではなく“この銘柄”への投資を考えてほしい

この類似が指し示すことは、論じ手によって正反対に分かれます。

1つは「米国株式のバブルはいずれ弾けるだろう」。
そしてもう1つは、「まだバブルとは言えないから、弾けるくらい膨れるまでまだまだ米国株は上がるだろう」。

前者は自制を求めます。
後者は強気を強気をあおります。

後者に説得力を感じる向きは「持たざるリスク」にかられ、GAFAに代表される成長株をどこまでも買い上がりたくなるわけです。

世界の株式市場は米国株式の動向に連れて動くので、これは見逃せない心理傾向です。

②「そんなに乗り遅れが怖いなら……ではこれから5年間、強気相場が続くとしましょう」
記事では現在のリスクオン環境において「忍耐強く規律正しい投資家は時代遅れになってしまった」と書かれています。

著者はこの雰囲気に待ったをかけます。

・株式100%で運用して相場の天井で売り切り、相場の底で買い直すことができればいいが、相場の天井も底もわかるものではない
・株式と現金の保有割合を保つ「規律正しい投資」を続けると、上昇相場の中で「利益をとり逃す恐れ」を抱くことになる
・しかし、残念なことに、大きな損失は恐れから生まれるものだ


そのうえで、著者はかんたんな仮定をおいたシミュレーション、というかかんたんな計算をはじめます。

規律派のAさんと積極派のBさんの比較です。
Aさんは株式65%・現金35%の規律正しい運用。
Bさんは株式100%の運用。

そしてこれから毎年12%リターンの好環境が5年続き、その後バブルが崩壊して株価が半分になるとします。
2000年~2002年のドットコムバブル、2008年~2009年のサブプライムバブルなどで実際に起こった事態です。

その結果は、こうなります。


仮に年率12%上昇の絶好調相場が5年続いても、相場崩壊があればあっという間に元の木阿弥。

そして規律派のAさんは、相場崩壊の果てでもたっぷり現金を保有しています。
安値になった株式をたらふく買い込めば、その先の回復期でさらにBさんに差をつけることができるというわけです。

現金の価値が低くなっている「現在」。
現金の価値が高くなる「下落相場」。

5年間上昇相場が続いたところで、モノの値段はそう変わったりしません。
ということは、お金の価値も変わりません。

現金の価値が安くなったり高くなったりするのは、私たちの心の動きにすぎません。


冷静を保ち、他人の心の動きを逆手にとっていきたいものです!

まとめ

記事にははっきり書いていませんが、著者は言外に含ませています。

「これから上昇相場が5年続いたとしても……」というのは、「これから5年間も上昇相場が続くことなんてないでしょ」ということ。

強気が5年続いても相場崩壊が来ればチャラなんだから、半年1年、2年くらい現金を抱えて待つなんてどうということはない……と思えてきたでしょうか?

具体的な対処法を考えてみました。

①すでに株式100%で投資している方
1,2年以内に下落相場入りする可能性をふまえたうえで、ポジションを維持していてもよいと思います。

リスクシナリオを事前に検討し、行動プランを立てておくとよいでしょう。
様子を見ながら臨機応変に対処すればいいとたかをくくっていると、逃げ遅れたときのダメージが大きくなります。

もちろん、余裕があれば記事にあるように、何割か現金保有に振り替えておけば安心です。

②現金を保有しているが、昨今のリスクオン相場に不安を覚えている方
記事を励みにじっとしていられればベストです。
が……上昇相場に参加したくなる気持ちもわかります。

ベータの大きいグロース系・クオリティ系のファンドや、エッジのきいた海外ETFに少額投資して気持ちを収めるという手があります。
上昇相場が続いてバブル化したときは、市場平均よりも大きな上昇が見込めるファンドです。

撤退する水準を事前に決めておき、上昇に連れて撤退水準を階段をのぼるように上げていけば、大損することはないと思います。

(日本株)
年金積立Jグロース
SBI中小型成長株ファンド ジェイネクスト(年2回決算型)
(米国株)
iFreeNEXT NASDAQ100インデックス
iFreeNEXT FANG+インデックス
(新興国株)
ウィズダムツリー 新興国株クオリティ配当成長ファンド(DGRE)
(テーマ型)
GS Motif データイノベーション ETF(GDAT)


人生を豊かにする「投資」の専門家
日野秀規でした。
ありがとうございました!

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