かつて米国ミシガン大学でファイナンスの教授をつとめ、現在ではヘッジファンドを運用する「2020年のDr. Doom(悲観博士)」ことジョン・ハスマンは、2月初頭から米国でのCOVID-19蔓延を危惧し、予測モデルを公表して警戒を叫んできました。

彼のCOVID-19および株式市場に関する最新コメントが出ています。
Containing the Crisis
危機を封じ込める

厳しい見通しですが、避けて通るわけにはいかない内容です。
要点を見ていきましょう。

楽観シナリオは破たん、米国では今年半ばまでに9万人が死亡する可能性



ジョン・ハスマンは「米国株式は史上空前の割高になっている」と2017年から叫び続け、その方針でヘッジファンドを運用した結果、成績は決して芳しくはありません。
しかし、かつてはドットコムバブル・サブプライムバブルを見事に回避した実績もあります。

彼はファンド運用者を本業とする一方で、医学研究を支援する財団法人を運営しています。
マイアミ大学の医学部には彼の名を冠したゲノム研究所も設けられています。

世界的に著名な学術雑誌「Nature」にゲノム分析に関する論文が掲載されたこともあります。
医学分野にも深い学識をもっているわけです。

彼は2月初頭から独自のモデルを構築して米国のCOVID-19死亡者の推移を分析・予測し、個人のTwitterで公表してきました。
米国でCOVID-19が騒がれ出したのは3月になってからのことです。
きわめて早い段階から、事の重大さを認識していたといえます。

4月15日時点では、米国の死亡者数は6月5日付近に6万人弱で頭打ちとなる予測を示していました。
彼によれば「楽観的なシナリオ」です。

しかし4月18日の数値で、死亡者数はモデルが予測する曲線を外れ大幅に増加し、彼は楽観シナリオの破たんを告げることとなりました。



黄色が「楽観的シナリオ」の線、赤が死亡者実測値の線。4月13日あたりから実測値が急上昇し楽観的シナリオを外れてしまいました。

ロックダウンの不徹底がいたるところで起こっていたのか、
医療崩壊がいたるところで起こってしまったのか……


現在、今年半ばまでに9万人が死亡する可能性について調査しているといいます。


4月22日現在での米国の死亡者数は約4万人です。
これからさらに5万人が亡くなる可能性が見えている現状で、複数の州がロックダウンの終了を求める群衆への対応に苦慮しています。

封じ込めによって新規感染者数は抑えられてきているが、新規感染者ゼロという一旦の収束までにはなお数カ月を要する計算です。
しかしトランプ大統領は早期のロックダウン解除をもくろんでいます。

早期のロックダウン緩和、からの感染再拡大が起こってしまえば、米国だけでなく世界はさらなる恐怖に叩き落とされることになります。
その時、株式市場はどうなるでしょうか?

米国株式市場の「この先10年のリターンは0%を見込む」

彼によると、3月の暴落以降に世界の株式市場は大きな戻しを演じたものの、依然として最大限の警戒が必要と言います。

以前から彼は、米国株式の評価は過去に例がないほどの割高となっており、60%~70%の下落があり得るとしてきました。

3月の暴落でいったんは穏当な評価まで水準が下りたものの、その後の戻しで現在は再び割高水準に復帰しています。

彼によると、米国株式市場の現状は「極端なバリュエーション(割高)と、不利な市場内部環境(まとまりのない市場心理、リスクオフ・オンの混在というような意味合い)」という組み合わせになっているといいます。

本来は好景気と投資家の強気があいまった帰結として株式市場が割高になるわけですが、実態は投資家心理はブレブレ、揺れる豆腐の上に何とか立っているような状態にあるというわけです。

同様の組み合わせは2001年5月、2007年12月、および2008年5月に起こったといいます。
ドットコム、そしてサブプライムバブル崩壊直前の時期です。



現状を評して、彼は「Return to “normal”の罠を思い起こさせる」といいます。

上の図で、「新しいパラダイムだ!」(”New Paradigm”!!!)と市場が熱狂したのちにいったん調整し、再上昇した時の段階にあるというわけです。
調整して、いい感じにガス抜きができた……というような感覚でしょうか。
ただしその後には垂直滑降が想定されています。

ハスマンはこれから10年の米国株式のリターンを「0%」と見積もっています。
その間、割高が解消されるにあたってS&P 500が今の水準から6割下落する可能性を見込んでいます。


彼は米国の著名投資家で当ブログでもたびたび紹介しているハワード・マークスのコメントを引きます。
「2月19日の史上最高値から15%しか下がっていません。世界は15%以上混乱しています」

さて、米国株式から逃げるには?

当ブログではしつこいくらい、米国株式の高騰に警鐘を鳴らしてきました。

米国株式のこれから30年は、これまでの10年とはだいぶ違うようです

米国金融市場研究の重鎮が「現在進行中のバブル」への対処を語る バブル、バブル、労苦 andトラブル

実際に米国株式をどう減らしたらよいのか?についても記事にしています。
どこかで非常ベルが鳴っている 米国株式からの逃避手段
参考になれば幸いです。

人生を豊かにする「投資」の専門家
日野秀規でした。
ありがとうございました!

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