2020年初からの運用成績で、米国株式(S&P 500)・米国除く世界株式・米国総合債券をしり目にゴールドが好成績を収めています。
2020年8月6日時点で、米国株式(+4.08%)に30%以上の大差をつける+34.17%の好成績です。


青:米国株式・+4.08% 黄:米国除く世界株式・-4.55% 緑:米国総合債券・+7.72% 橙:ゴールド・+34.17%

2018年8月、1トロイオンス(約31グラム)当たりの価格で1,200ドルを切り底値をつけたゴールドはその後、まもなく始まった世界的な株式の弱気相場に反発するかのように値を上げ続け、2020年8月5日には2,061ドルを突破しました。
70%を超える上昇です。

図でも明らかなように、新型コロナウイルス蔓延に端を発する2月下旬~3月中旬の世界株式暴落を、ゴールドはわずかなダメージで切り抜けました。
その後、社会経済状況の先行き不透明が続くなか、投資家の不安を反映するようにじわじわと値を上げ続けています。

ゴールドはこれまで一般の個人投資家にはなじみの薄い資産でした。
ここにきてにわかに脚光を浴び、2,000ドルを超えてゆくという大手金融機関の予測からそろそろ息切れという向きまで先行きの観測が入り乱れるなか、ゴールド投資の基本を押さえないまま“値ごろ感”で参入してしまう方が増えています。

一呼吸おいて、ゴールド投資の基本の“き”を押さえていきましょう。

ゴールドの長期投資成績をひと言で言えば、なんと……“圧敗”

1973年2018年にかけての46年間、ゴールドと米国株式(S&P500)・米国債券(20年以上の長期国債)の投資成績を比較した表です。
比較の結果は一言、ゴールドの“圧敗”です。


(Gold Vs. Stocks https://seekingalpha.com/article/4296091-gold-vs-stocks

年率リターンでゴールドは株式を約5%下回り、リスクは14%ほど上回っています。
この数値でシミュレーションを行うと、ゴールドに46年間投資した結果の中央値は約3.2倍、米国株式では約62.1倍となりました。
まさに“圧敗”です。
長期国債の28.5倍にも大差をつけられ、長期運用の対象としては論外にみえます。

ただし1年ごとの成績を解剖してみると、また違った風景が見えてくるのです。

ゴールドは「カバンに入れっぱなしの折りたたみ傘」のように機能する

まず、「株式がマイナスリターンになった時期」をまとめてみました。


(Gold Vs. Stocks https://seekingalpha.com/article/4296091-gold-vs-stocks より作成)

1973年~2018年にかけ、米国株式(S&P 500)がマイナスを記録した年は9度ありました。
この9年の年率リターンを平均すると、ゴールドのリターンは米国株式を大幅に上回り、さらに米国長期国債のリターンをも上回りました。


(Gold Vs. Stocks https://seekingalpha.com/article/4296091-gold-vs-stocks より作成)

長期国債がマイナスを記録した年は12度ありました。
この12年の年率リターンを平均すると、ゴールドは米国長期国債を大幅に上回り、さらに米国株式のリターンをも上回りました。

ゴールドをポートフォリオに組み込んでいれば、株式・債券のいずれが不調な時期であっても、それを和らげる緩衝材の役目を果たしていたわけです。

普段使いのカバンに常備しておく折りたたみ傘は、晴れの日が続けば重いだけの無用の長物であるように感じられ、いっそのこと傘なんて不要だと思うようになるかもしれません。
しかし、ひとたび想定外の豪雨が来れば折りたたみ傘はその真価を存分に発揮します。

びしょ濡れになり風邪をひき肺炎を起こして長期入院などという“最悪の事態”から、折りたたみ傘1本で身を守れると思えば……
ポートフォリオを決定的なダメージから守る、ゴールドの価値はこの点にあります。

ゴールドを組み入れた長期運用ポートフォリオをグラフで確かめてみます。


青:米国株式・米国除く世界株式・米国総合債券・米国除く総合債券に25%ずつ均等投資
赤:ゴールドを加えて20%ずつ均等投資

1994年からの26年では、株式・債券を50%ずつ組み入れたPortfolio 1(青)と、ゴールドを加えたPortfolio 2(赤)がいずれも年率リターン6.66%を記録しました。

リスクはゴールドを組み入れたPortfolio 2(赤)が小さくなりました。
最大マイナス年の比較でも、Portfolio 1(青)の-19.98%に比べゴールドを加えたPortfolio 2(赤)は-14.20%と、より安心感のある値動きとなっています。

ゴールドを加えた均等投資はゴールド抜きの均等投資より少ないリスクで同等のリターンを稼ぎ出し、より効率性の高い運用となったことがわかります。

この期間は、一貫して債券の金利がつぶれ、債券価格が上昇してきました。
詳しくは後述しますが、世界先進国の長期国債の金利が次々とマイナスに入り込み、米国債はかろうじて寸前で踏みとどまっているという現状では、今後のリターンが見込みにくい債券に比べゴールドの投資価値はより高まっているといえそうです。

個人投資家の前にそびえるゴールド投資の“高い壁”

ゴールド投資を検討するにあたり、個人投資家が必ずと言っていいほど突き当たる高い壁があります。

“ゴールドは企業と違って付加価値を生み出すわけでもなく、債券と違って利息が得られるものでもない。つまりゴールドは、長期的に投資家にリターンをもたらす固有の源泉をもたない”
という理屈です。

一見もっともと思われる理屈ですが、そもそも“資産”としては株式より債券より、まずゴールドが先にあったことを忘れてはなりません。

文明の初期から、ゴールドは通貨として、また富を蓄え、保存するための有形の手段として使われてきました。

産業用途はあるものの、産業価値に生産コストを加えても現状の価格を説明できる水準ではありません。
ゴールドの価値はその不変性にあります。錆びたり変質せずずっときれいなままであることで、“価値保存の手段としての価値”が付与されているわけです。

加えて、ゴールドは債券投資のように利息支払いや元金償還を反故にされることはなく、株式投資のように倒産することもありません。
地中の埋蔵量は50mプール1杯分しかないといわれ、今後の供給量はごく限られます。
大きな価値を狭い場所で貯蔵することができ、現在主流の金融システムの外に存在するという意味で安全性があり、一般的に価値のある資産とみなされています。

付加価値を生むという形式でなくても、その“株式や債券とは質の異なる安全性”に基づく価値保存力こそが、まさにゴールドがもつ付加価値といえます。

前編はここまでです。
ゴールド投資の有効性とその背景がお判りいただけたでしょうか?
後編では今後の予測と具体的な投資方法をお伝えします!

人生を豊かにする「投資」の専門家
日野秀規でした。
ありがとうございました!

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