株式とREITの比較
長期投資家にとって、株式・債券に続く第3の資産クラスであるREIT投資について検討します。
REITのリスク・リターンを株式・債券と比較してみます。
(ドル建て) | リターン | ボラティリティ |
米国REIT | 6.25% | 16% |
米国大型株 | 5.5% | 14% |
米国総合債券 | 3.25% | 3.75% |
日本大型株 | 6.25% | 14.75% |
世界国債 | 2.5% | 6.5% |
※2018 Long-Term Capital Market Assumption
JPモルガンによる、2018年から10~15年間に見込まれる各資産の期待リターンです。米国ではREITが株式を超えるリターンをあげると予測されています。
過去の実績は以下の通り。
※東証REIT指数・東証株価指数(TOPIX)の長期推移(一般社団法人不動産証券化協会)
ここ15年~20年の長期では、世界的にREITの運用利回りが株式を上回ってきました。日本でも同様で、東証REIT指数がTOPIX(どちらも配当込み)を年率で約1%上回っています。
過去の実績が良好で、先行きも有望と見込まれています。引き続き検討を進める価値はありそうです。
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定性的な評価
本来、不動産は株に比べて価格変動リスクが低いとされています。よい評価をされた不動産の収益が、事業会社で起こりうるように急速に落ち込んだりすることは考えにくいからです。もちろん、バブル後の日本のように長期での下落はあります。
また、インフレヘッジの特性も評価されています。賃料がインフレに伴って上昇すると見込まれるため、不動産の経済価値もインフレに伴って上昇するとされています。
REITは持ち株会社ならぬ「持ち不動産会社」の株を持つようなものです。であればその特徴も不動産類似と考えたいところですが、証券化によって株式の特徴がかなり付加されています。
②不動産の管理運用といった「経営」の評価が入るため、利益成長やスポンサー企業(大株主、物件の供給・入れ替えにも影響大)についての評価が必要となった
③LTV, NAV倍率, FFO倍率など、株式におけるPBRやPERのような指標による評価が可能になった
このようにみると、株式とあまり変わらないような気もしてきます。それでは、これまではなぜREITのリターンは株式の利回りを上回ってきたのでしょうか。そして、それは今後も継続するのでしょうか。外部環境について考えていきます。
REITの超過収益をもたらした環境を考える
●キャップレートの変化による収益不動産価格の上昇
日本銀行による国債の買い入れにより、ベース利回りが低下。それによりキャップレート(投資家の期待利回り)が低下し、不動産価格の上昇につながってREIT価格を上昇させた、という経路があり得ます。債券価格のような感じですね。
●レバレッジの差異
REITは一般の事業会社に比べ借入が多く、財務レバレッジが高いです。J-REITができた2003年以降、日本では一貫して(名目では)緩和的な金融政策が続いてきました。事業会社に比べ、より金融政策への感度が高いREITの超過収益の一端はここにありそうです。
●躍進・中国による日本の不動産取得
外国人投資家、中でも中国人投資家による日本の不動産取得が続いています。優良物件の市況活性化を通して、REITの所有する物件価格の上昇がもたらされているのかもしれません。また2017~2018年は、外国人が実際にJ-REITを大きく買い越しています。
●日本銀行によるJ-REIT取得
金融緩和政策の一環として、日本銀行は株式ETFとJ-REITを月次で購入しています。2018年3月時点で、日銀のETF買い入れを通じた株式保有は東証1部時価総額の約3.8%。REITの保有は上場REIT全体の時価総額の約4.7%となっています。1%ほどですが、日銀の買い圧力は株式に比べREITでより高いようです。
●インフレヘッジの特性発揮
2013年の異次元緩和開始以降、消費税増税による蹉跌をはさみながら、インフレ率がじわじわと上昇してきました。それは人手不足を呼び、人件費上昇を通じて事業会社の業績に一定の負の影響を与えています。一方、不動産の賃料は右肩上がりでの空室率の低下、賃料の上昇を享受してきています。
結局、金融緩和という1つの事象をいろいろな角度から眺めただけという気もいたしますが……。
次回は、物件別のREITの特徴、各種REIT指数、業種分散・地域分散、今後の外部環境の想定、そしてポートフォリオにどう取り込むかを考えていきます。
(参考文献)
外国人投資家の資金がJ-REITに向かう
ピクテ投信投資顧問 投資情報コラム 実践的基礎知識REIT編(1)~(5)
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