海外株式ファンドはインデックスが強力、そこに蟻の一穴スマートベータのお話です。
いつもありがとうございます。

S&Pのアクティブファンド統計は「正義の剣」

アメリカ株式市場を代表する指数であるS&P500やダウ・ジョーンズ工業株平均を算出しているS&P Dow Jones Indicesは、毎年世界各国の投資信託市場調査を行い、「SPIVA Scorecard」(S&P INDICES VERSUS ACTIVE)を発表しています。

S&Pが算出している各国の株価指数と、アクティブファンドとの勝敗を調査発表しているわけです。
調査結果は1年、3年、5年、10年で区切られます。

なぜS&P Dow Jones Indicesがこんなことをしているのかというと、「アクティブはダメ! インデックス圧勝!」をぐうの音も出ない形で突きつけたいからです。
自社の商材の優位性を広めているのです。

※参考文献より引用

図は、世界各国の株価指数とアクティブファンドの比較を、1年・3年・5年で行った結果です。
株価指数を下回ったアクティブファンドの割合が示されています。
メキシコ・南アフリカの1年の結果では約6割のアクティブファンドが株価指数を上回りましたが、それ以外は株価指数がアクティブファンドを圧倒しています。

つまり、株価指数に勝てるアクティブファンドを選ぶゲームの勝率は半分以下です。

SPIVAが運用業界に正義の剣をふるっているといえます。
時に正義は息苦しいのですが……。

SPIVA日本版をよく見てみよう

SPIVAが日本の投資信託を詳細に調査したSPIVA®日本スコアカードが公開されています。

日本の大型株式ファンドは、10年の成績で63.2%がインデックスに負けています。
日本の中小型株式ファンドは、10年の成績で56.2%がインデックスに負けています。
一見、厳しい勝負です。
ただし、よく見ると少し世界が変わります。


※SPIVA®日本スコアカードより

上の図は、日本の大型株・中小型株ファンドと市場インデックスのリターン差を示しています。
濃い青がすべてのファンドの運用成績を単純平均したもので、薄い青は各ファンドの運用資産で重みづけをしたものです。
例をあげてみます。

Aファンドの年率リターンが10%で運用資産が1億円。
Bファンドの年率リターンが5%で運用資産が2億円とします。

濃い青で表示される成績は、(10%+5%)÷2=7.5%で、これは単純平均。
薄い青で表示される成績は、10%×1/3+5%×2/3=6.7%で、これは資産額加重平均です。

薄い青線より濃い青線のほうが運用成績が良いということは、「運用資産の少ないファンドのほうが運用成績が良い傾向があった」または「運用資産の少ないファンドの中に、すぐれた成績のファンドがあった」ということを示しています。
中小型株ファンドでは特に顕著な傾向です。

単純平均(濃い青線)で考えますが、赤い補助線でわかる通り、大型株ファンドは全体で2009年~2018年の10年間で市場平均を約5%上回っています。
中小型株ファンドは同時期で約30%上回っています。

アクティブファンドは平均的には優秀なのです。
……生き残っている限りは。

日本の大型株ファンドのうち、2018年までの10年間を生き残ったのは62.6%。
中小型ファンドになると56.8%になります。

10年間生き残り、かつ優秀な成績を収めるであろうファンド。
残念ながら、これを選ぶ決まった方法、再現性のある方法がないのですね。
今後の調査課題としていきたい所存です。

外国株ファンドはさらに悲惨

外国株に投資するファンドの調査結果は悲惨の一言に尽きます。

米国株式ファンドは、10年の成績で75.0%がインデックスに負けています。
グローバル株式ファンド(日本を含む)は92.3%、国際株式ファンド(日本を除く)は93.0%、新興国株式ファンドでは94.6%がインデックスに負けています。

外国株式アクティブファンドの中で、長期的にインデックスを上回るファンドを選ぶのはムリゲーです。
コストの低いインデックスファンドに投資するのが勝てるゲームです。

ただし、中にはムリゲーと切り捨てるには惜しい、使い道のあるファンドも存在します。

①テーマ型
②地域限定型
③スマートベータインデックス型

たとえばAI関連株、インフラ株、IT株というような「テーマ型」の投資信託は、銘柄選定の基準がはっきりしているので「自分の相場観に基づいて使う商品」といえます。
長期でのインデックスとの勝敗を問う意味があまりない商品です。

またグローバル・国際・新興国といったファンドの区分けは、運用する側の都合での分類にすぎません。
それぞれの国にはそれぞれの事情があり、株式の評価(バリュエーション)もまたそれぞれ。
ご紹介したCAPEなどを参考に、割安になっている国の株式に長期投資する戦略があり得ます。

たとえば「中欧株式ファンド」が新興国インデックスファンドに比べて長期での成績が劣ったからといって、良くない商品であるという評価はできません。
中欧諸国が割安になっているときに投資すれば結果は異なるからです。
地域限定型の投資信託も、広域のインデックスとの比較はリーズナブルではないといえます。

SPIVA Scorecardはインデックスファンドを除外していますが、スマートベータインデックス投資信託は含まれている可能性があります。
数少ないスマートベータ投資信託は、一般のアクティブファンドよりコストが低く、戦略の優位性によっては市場平均インデックスファンドを長期で上回る可能性があります。

SPIVA Scorecardの調査を見て、「外国株式では市場平均インデックスが必勝」と早合点してしまうと、超過収益を得るチャンスを見落とすことになります。

外国株に投資するスマートベータインデックス型投資信託

①野村インデックスファンド・米国株式配当貴族/SMT米国株配当貴族インデックス・オープン
米国株式に投資する投資信託です。
以前の記事で詳しく紹介しました。

この2つのファンドは同じスマートベータインデックス「S&P500配当貴族指数」に投資します。
S&P500を構成する企業のうち、過去25年間連続して1株当たりの配当を増加させてきた企業をピックアップして構成されています。

配当を25年間にわたって増加させてきたということは、
・時代に劣化させられないビジネスモデル
・保守的で信頼性の高い経営
・株主に利益を還元する姿勢
といった企業であることを示しています。
アマゾンやグーグルとはまた違った、米国の底力を担う企業群です。

こうした優良企業の中で、割高になった銘柄を売り、割安になった銘柄を買い足すのがこのファンドです。
急上昇は期待できませんが、長期で安心して持つにふさわしい商品です。
現状、日本国内の投資商品(海外ETFを含まない)で、米国株式に長期投資するにはベストチョイスです。

②楽天・米国高配当株式インデックス・ファンド
米国の大型株・中型株のうち比較的高配当な銘柄に投資します。
米国の上場ETF“Vanguard High Dividend Yield ETF”(VYM)を買い付ける投資信託です。

VYMは、長期の成績ではS&P500とそう変わりませんが、高配当ポートフォリオのためバリューファクターが働きます。
相場下落の折に購入すると、市場平均を上回る可能性が上がります。

③SMT欧州株配当貴族インデックス・オープン
欧州株式に投資する投資信託です。
以前の記事で詳しく紹介しました。

この投資信託が投資するS&P欧州350配当貴族指数は、欧州の代表的な企業の株式を幅広くカバーするS&P欧州350から、過去10年間連続して1株当たりの配当を増加させてきた優良企業をピックアップして構成されています。
急上昇は期待できませんが、長期で安心して持つにふさわしい商品です。

④EXE-iグローバル中小型株式ファンド
全世界の中小型株式に投資します。
米国の上場ETF2本“Vanguard SmallCap ETF”(VB)、“Vanguard FTSE AllWorld ex US SmallCap ETF”(VSS)に6:4の割合で投資します。

サイズファクター(小型株ポートフォリオが市場平均を長期で上回る効果)が期待できます。
ファクターについては以前の記事で詳しく紹介しました。

まとめ

全世界的に、市場平均インデックスファンドに勝てるアクティブファンドを選ぶのは至難の業であることがわかっています。
勝率はよくて半分以下、国によっては1割以下です。

日本も例外でなく、日本株式の投資信託で市場平均に勝てるのは半分以下。
国内で販売されている、外国株式に投資する投資信託に至っては長期で75%~9割以上の確率で市場平均に負けています。

ただし、アクティブファンドの中でも使い道を確認して活用できるファンドもあります。
テーマ型・地域限定型の投資信託は一概に市場平均インデックスと比べることにあまり意味はありません。

スマートベータインデックス型の投資信託はコストが低いので、戦略の優位性・ファクターリターンに着目して投資する手があります。

お相手は、人生を豊かにする「投資」の専門家
日野秀規でした。
ありがとうございました!

(参考文献)
Risk And Reward – The Advantage Of Passive Investment

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