年の瀬最後の記事です。
2019年に設定された投資信託の当初設定額ランキングが発表されていました。
2019年のティー・ロウの「米国成長株式」、当初設定額が今年最大の1,482億円
2019年1月~12月27日までに設定された投資信託の当初設定額ランキングで、ぶっちぎり1位だったのが「ティー・ロウ・プライス米国成長株式ファンド 愛称:アメリカン・ロイヤルロード」。
米国の優良成長株に投資するファンドです。
みずほ証券とみずほ銀行の2社のみの販売ながら、1,482億円という巨額のスタートでした。
よりによってこのタイミングで、米国のグロース株ファンドのはめ込みとな……。
ティー・ロウ・プライス米国成長株式ファンドの概略
同一戦略のファンドが米国ティー・ロウ・プライスで長期運用されています。
T. Rowe Price Growth Stock Fund(PRGFX)
ポートフォリオを確認しましたが完全に同一ファンドです。
長期的には、ほぼ、このファンド同様の運用成績が得られます。
ほぼ、というのは、コストが異なるからです。
米国ファンドの総経費率は0.66%である一方、ティー・ロウ・プライス米国成長株式ファンドの信託報酬は1.463%となっています。
信託報酬に執行・事務コスト等を加えたものが総経費率なので、実際には毎年0.8~1%程度のコスト差による成績のラグが発生します。
ところで当ファンドおよび米国ファンドのポートフォリオは、実はバンガードのグロースインデックスファンド“VUG”ともよく似ています。
ポートフォリオを過去の運用成績を以下の表にまとめました。
米国ファンドとVUGの比較で、年率リターンは1.04%勝っていました
ただし、ティー・ロウ・プライス米国成長株式ファンドを利用することでコストが0.8~1%程度余計にかかることをふまえると、その差はほぼなくなります。
ファンドマネージャーの判断や、あるいはファンドマネージャーの交代等でインデックスETFに負ける可能性は十分にあります。
また、10年以上の長きにわたって続いたグロース株の天下がバリュー株にとってかわられる可能性が見えてきた現状です。
バリュー株への長期スタイル転換が起これば、この先、S&P 500やトータルストックインデックスに長い間負け続ける可能性も十分にあります。
そもそも米国株式はなかなかの割高水準です
当ブログでは米国株式がまるで親の仇であるかのように、この1年間たびたび警鐘を鳴らしてきました。
株価を評価する有力な指標の1つであるCAPE(株価10年平均収益率)が25倍を超えれば過熱と言われますが、米国株式市場は目下CAPE 30倍に迫る高評価をつけています。
世界恐慌前を超え、ドットコムバブル期に迫る高評価です。
ここから先の株価上昇は、ババ抜きのような「負けを誰かに押し付けて勝ち逃げする」ゲームをプレイすることとイコールです。
遊びのお金を賭けるならまだしも、長期の資産形成には向きません。
本来は勢い込んで買える状況ではないはずですが、株価がこれだけの高評価にあるということは、裏返せば米国株式が高い運用成績を長年続けてきたということとイコールです。
「日本や欧州、新興国を出し抜いて順調に上がり続けてきた米国株式の中でも、成長株をより抜いたファンドです」
当然、売る側からすれば売りやすいです。
買う側からすれば魅力たっぷりの売り文句です。
人には現状が続くという希望的観測、「外挿バイアス」というものがあるからです。
問題は、
「人には現状が続くという希望的観測、『外挿バイアス』というものがある」ということを売る側は完全にわかっていて、いわば付け込んでいることです。
地獄への道は善意で敷き詰められている
とはいえ、金融機関はお客が買いたくなるものを提供しているだけとも言えます。
たとえば生活習慣病になる人が増えているからといって、ファストフード店を責めるのも妙な話です。
そもそもお客さんというのは、自分が何がほしいのかもわかっていないことが多いもの。
マクドナルドで顧客にアンケートをとると、いつも上位に来る要望は「ヘルシー志向に合わせてサラダを充実させてほしい」だといいます。
でも、要望に応えてヘルシーなサラダを拡充しても一向に売れやしない。
売れるのはいつだって牛肉と、油で揚げた芋と、すべてが小麦粉でできたグラコロ。
僕たちは肉と油と糖質が大好きなんです。
金融機関はそんな僕らのことをよーくわかっていて、米国成長株という油と塩気のきいたジューシーなバカデカバーガーを勧めてくれます。
おいしいから一杯食べたくなります。
ありがたいです。
でも、言うことをそのままうのみにしていたら、ポートフォリオは生活習慣病一直線です。
将来のために、今は食べる気にならないサラダをあえて注文するという選択を、自分のために、自分でしなければなりません。
購入を考えている方はもちろん、すでに買ってしまった方も、年末年始のお休みの間に頭を冷やして熟考されることをお勧めしたいと思います。
あえてこれから米国株式に投資するなら、ウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイか、グーグルが手堅いと思っています。
人生を豊かにする「投資」の専門家
日野秀規でした。
ありがとうございました!
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