お金を稼ぐものが善でお金を溶かすものは悪、そんな投資の基本に立ち返るお話です。
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「ティリングハストの株式投資の原則」



米国の大手運用会社フィデリティで “Fidelity Low Priced Stock Fund”のファンドマネージャーを務め、長期にわたって卓越した成績を収め続けてきたジョエル・ティリングハストの著書です。

1989年~2015年の在任期間中、S&P500インデックスファンドが約9.8倍に成長(年率9.17%)したところ、当ファンドは約29.3倍(年率13.87%)という好成績を収めました。

その投資方針は徹底したバリュー投資。
銘柄の「本源的価値」を見定めたうえで、狙いすまして割安な価格で購入し、想定価格になるまでじっと保有しました。
小型割安・クオリティ株式への投資を得意としていたようです。

銘柄ピックアップから株式投資そのものの解釈まで、ティリングハストの経験と英知がつまった本書。
その中から、兼業個人ファンド投資家が投資信託やETFを使って行う投資に活かせる箇所をピックアップしてご紹介します。

「米国で50年にわたって高収益を維持してきた産業」とは?

本当に価値ある企業を見出すための第一歩は「収益性のすぐれた企業」を見つけ出すことである、とティリングハストは言います。
そのうえ、長期投資では収益性の「継続性」も重要です。

そこで彼は、記録を1964年にさかのぼり、金融機関を除いて営業利益率が20%を超えた企業をピックアップしました。
さらにその中から32産業の代表となる企業を選定しました。

50年後にそれらの企業の収益性がどうなっているか。
これを各産業の収益性に見立てて調査したわけです。

2014年になると、50年前のトップ企業の優位性は平均的には低下していましたが、それでもその収益性は、10.5%といわれるS&P500の平均値よりも高位を保っていました。

なかでも製薬・鉄道・非耐久消費財(いわゆる生活必需品)企業の収益性は高位で継続していたのです。





ファイナンスにおける企業価値算定の手法である「配当割引モデル」に照らしても、企業の「本源的価値」は以下の4つの指標を根拠として考えることができます。
 ① 収益性
 ② ライフスパン(事業継続性)
 ③ 確実性
 ④ 成長

上記の産業群は、このうち「成長」だけが他産業に比べて特に高いわけではないものの、それ以外は一様に満たしていました。

ジェレミー・シーゲル「株式投資の未来」で示された調査結果とも整合的です。
これらが景気や時代の波に左右されない、高収益性継続産業群なのです。

「50年前には存在せず、いま日の出の勢いにある」ITはどうか?

本書は1章をまるまるITへの投資に割いています。
「ハイテク分野にウォーレン・バフェットはいない」という一文から始まります。

日本でも「IT長者」という言葉をよく耳にしました。
しかし、ハイテク分野で財を成した者はいずれも、バフェットのように、上場株式への投資でそうなったわけではないと著者は言います。

実際の「IT長者」は、ベンチャーキャピタリストや企業の創業者、従業員です。
株式公開やその後の成長に伴って、最上流から投資していたものだけが大金持ちになる世界がITなのです。

これは「当事者」として、自らの資本とすべての情熱を、1つの企業に注ぎ続けた結果です。
僕らが証券投資の常として行う分散投資ではありません。

ITはテクノロジーの栄枯盛衰やゲームチェンジが著しいことに加え、大資本が小資本を圧することが実は多いといいます。
勝者総取り死屍累々の世界です。

また、株式公開後も後続のスタートアップに常に脅かされる激しい競争環境の中、研究開発費が重くのしかかり、かつ実を結ばず資本を溶かしていくケースも珍しくありません。
業界としては他の産業を圧して伸びてはいても、勝ち組企業はごく一部にとどまります。

たとえば、ハードディスクドライブの年間出荷量はこの二十数年間で20倍以上に増大してきましたがが、累積で200を超える企業が製造に参入していたといいます。
その多くは墜落し、焼け落ちたのです。

現在では2社が独占的な地位を占めていますが、分散投資を行っていた場合、その2社の株式から上がった収益で他の数十~200社分の損失をカバーできていたとは思えません。
分散投資で幅広く保有しても、一部の勝ち組の保有効果で死屍累々の損失を埋めることはできません。

そして近年、半導体ドライブにとってかわられるにつれ、心配の種は陳腐化に移ってきています。
ハイテク分野では、製薬や鉄道や生活必需品企業のように、永続しうるものはないのです。

長期分散投資が報われるか、非常に疑わしい産業といえます。

僕たち「兼業個人ファンド投資家」はティリングハストのアドバイスをどう生かす?

①製薬・鉄道・生活必需品分野への投資
世界の製薬企業に投資する商品のうち2つをご紹介します。

グローバル・ヘルスケア&バイオ・ファンド
世界の製薬・医療機器・バイオテクノロジー企業に投資するアクティブファンドです。
財務・収益状況(ファンダメンタルズ)の健全な企業へ長期的な割安度を重視して投資(バリュー投資)を行います。

実際の運用指図は、ヴァンガードのアクティブファンドの運用者としても知られるウェリントン・マネジメントが行っています。
ウェリントンの取り分に三菱の取り分が乗って、信託報酬は驚異の2.38%となっています。

iシェアーズ グローバル・ヘルスケア ETF(IXJ)
世界の医療関係企業のインデックス“S&P Global 1200 Healthcare”に連動する海外ETFです。



アクティブ運用の超過収益は発生してはいるのですが、信託報酬の高さでパフォーマンスが削られています。
海外ETFの利用が賢明です。

世界の鉄道会社に投資する商品は以下の通りです。
JPM 世界鉄道関連株投信
先進国、なかでも特に米国への投資が多いのが特徴です。

グローバル鉄道関連株オープン
日本および新興国への投資がJPM 世界鉄道関連株投信に比べて多くなっています。

経費率の低い商品としてはiシェアーズ グローバル・インフラ ETFがありますが、鉄道株の割合は約20%と低く、鉄道株投資に適した商品ではありません。

信託報酬は高いものの、アクティブファンドを通じた投資となります。
現時点での運用成績はJPM 世界鉄道関連株投信に分があります。



世界の生活必需品企業にはこのETFで投資できます。
iシェアーズ グローバル生活必需品 ETF
世界の生活必需品企業のインデックス“S&P Global 1200 Consumer Staples”に連動する海外ETFです。



②ITセクターへの長期投資
WisdomTree U.S. Quality Dividend Growth Fund(DGRW)
WisdomTree Emerging Markets Quality Dividend Growth Fund(DGRE)
米国ETF運用会社ウィズダムツリーから提供されている、「今後の増配が期待できるクオリティ企業」に投資するETFです。

将来の増益期待が高く、かつ高ROE・高ROAで経営の効率性にも優れた企業が選抜されています。
ポートフォリオは配当利回りで加重されているので、割高な企業の割合は少なく、割安企業の割合が多くなります。

これらのETFは、大きな特徴として「ITセクターにおける増配クオリティ企業」をカバーすることを目的の1つとしています。

ITセクターは歴史の浅い企業が多いため、増配継続履歴が求められる配当貴族指数にほぼ含まれていません。
その弱点の克服を、これらのETFは「利益成長+効率経営➡増配」という道筋に求めています。

実際のところ、米国株式に投資するDGRW・新興国株式に投資するDGREのいずれも、市場平均ETFに比べてもITセクターの割合は若干ですが多くなっています。
ITのなかでも特に危険なスタートアップや無配の企業は排除され、優良企業にフォーカスしたポートフォリオです。

ITセクターの成長をとるにあたって、市場平均ETFの一部をこれらの商品に置き換えるといった使い方が有効です。

まとめ

米国の大手運用会社フィデリティで “Fidelity Low Priced Stock Fund”のファンドマネージャーを務め、長期にわたって卓越した成績を収め続けてきたジョエル・ティリングハストは、その著書「ティリングハストの株式投資の原則」において、本当に価値ある企業を見出すための第一歩は「収益性のすぐれた企業」を見つけ出すことであると説きます。

彼の調査によると、製薬・鉄道・非耐久消費財(いわゆる生活必需品)企業は50年の長期にわたって高収益性を維持していました。

一方、いまをときめくITセクターについては著者は否定的です。
競争が異常に激しく、研究開発費が著しく企業を圧迫するにもかかわらず勝者総取りで、死屍累々の世界では、起業家やベンチャーキャピタリストの中でもハードワークかつ強運を得たもののみが大金持ちとなります。

一般個人投資家はITセクターへの投資では報われることはないと著者は説くのです。

製薬・鉄道・生活必需品のいずれも、国内ネット証券で購入できる投資信託や海外ETFを通じて投資することができます。

ITセクターについても、巨額の成功を求めることはかなわないまでも、規律正しい経営と高成長を兼ね備えた企業を多く保有する海外ETFを通じて、かしこく保有することができます。

人生を豊かにする「投資」の専門家
日野秀規でした。
ありがとうございました!

(参考文献)

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