米国では中流程度の一般個人でも、資産形成にあたってファイナンシャル・アドバイザー(IFA)を利用することが多いです。

単に投資アドバイスを受けるだけでなく、税金や相続などの包括的なコンサルティングが受けられます。
IFAを通じてファンドの購入・管理を行うこともできます。
「総合金融代理店」といったニュアンスです。

IFAは金融教育を受けたうえで顧客と対峙するわけですが、その際に「顧客に対して手を焼いていること」が米国投資情報サイト”ETF TRENDS”で記事になっていました。
なぜ行動ファイナンスがアドバイザーの成功への挑戦なのか
Why Behavioral Finance Is Challenging for Advisors to Execute Successfully

個人投資家に共通する「判断の誤りにつながりやすい心の動き」がまとめられており、大変参考になります。

人間の心の弱さや判断ミスのくせは古今東西を問わず共通するものがあります。
皆が間違えやすい局面を知り、そこで不動心を貫いたり、あるいは逆手にとった投資判断を行えれば運用成績の向上につながるはずです。

ポイントをまとめていきます。

ひと言で言えば「どっしり構えておれ」ということだが……



記事にある「個人投資家の判断ミスにつながる心の動き」を箇条書きにまとめると、

①利益最大化への欲求
②金融業界の過大・無用な情報提供
③損失回避対策の不備


ということになります。
細かく見ていきます。

①利益最大化への欲求
資産形成を開始するにあたり、顧客はIFAと相談し、目標到達に最適と思われる投資計画およびポートフォリオを作成して長期で投資を行っていくことになります。

問題は、顧客の心が相場の動きにつれて大きく乱れることによって起こります。

通常、長期投資のためのポートフォリオ作成においては分散を利かせます。
世界の株式・債券・不動産(REIT)、場合によってはゴールドや石油・農産物などの商品インデックスまで含めることもあります。

利益を最大化するために、予測に基づいてポートフォリオを偏らせた場合、予測が当たれば大きく儲かりますが外れれば資産形成の目標を達成することができなくなります。

未来の景気上昇・悪化や経済環境の変化は読めないので、どうなってもそれなりの収益が達成できるよう、「すべての卵を1つのかごに盛らない」分散ポートフォリオとするわけです。

しかしながら……
ここ10年の栄耀栄華を極めた米国株式の成績を見て、やはり米国は世界の経済成長をけん引するリーダーだ!と舞い上がり米国株式に資金を集中させたいと思う。
こんな人は、実際僕のごく親しい間柄でも存在します。

その逆も言えます。
日本人であれば、わが国はデフレと少子高齢化で地盤沈下する一方……とイヤでも思ってしまいます。
こんな国の株なんて長期で儲かるわけあるかー!と。

気持ちはわかりますが、
繰り返しになりますが、

利益を最大化するために、予測に基づいてポートフォリオを偏らせた場合、予測が当たれば大きく儲かりますが外れれば資産形成の目標を達成することができなくなります。

未来の景気上昇・悪化や経済環境の変化は読めないので、どうなってもそれなりの収益が達成できるよう、「すべての卵を1つのかごに盛らない」分散ポートフォリオとするわけです。

記事ではこんなふうにぼやいています。

投資家は……利益を最大化することが最良の方法であると考えている。
これは、投資家が投資計画を遵守するのを支援することで、ポートフォリオのパフォーマンスが少なくとも年率1.5%向上する可能性があるという事実と衝突する。

顧客は、「あなたは愚かな間違いを犯す」または「あなたこそがあなた自身の最悪の敵だ」などとアドバイザーから言われたくはない。
この最初のバイアスを克服することは困難である。

即時の満足の必要性は、抽象的な未来の報酬を圧倒する。
感情的な衝動は、論理的な反省や行動よりも強い。

綿密な相談と検討のうえで作成した投資計画とポートフォリオを守れないことで、運用成績が落ちてしまうという研究結果があるわけです。

にもかかわらず、相場の動きを見て投資家の心に生じた「いま○○を買えば儲かる!」「いま○○を売らないと破滅する!」という感情的な衝動は、容易に「投資計画を守る」という合理的な行動を打ち負かしてしまいます。



折れ線は1999年~2011年にかけての米国株式S&P 500インデックスの推移、棒グラフが米国株式投資信託への投資額です。
折れ線の上昇と買いの増加、折れ線の下落と売りの増加が同期していることが一目瞭然です。

相場が上がっていくなかで買い、下がり出したら売る。
儲かるわけがありません。
僕らを含むみんながへたくそなんです。


かといって、
「感情的な衝動に負けてはダメですよ、あなたのそんな心の動きこそがあなたの目標達成を妨げる、あなたの最大の敵なんですよ」
なんて言われたくはないしそんな風に思いたくもないのが人間ですが、だからこそ、逆手に取っていくくらいのしたたかさを持ちたいもの。

こんな心の動きを逆手に取るなら、こうなります。

相場の動きを見て……
・買いたくなったら → 我慢して計画通りの投資を続ける
・売りたくなったら → 我慢して計画通りの投資を続けるか、むしろ投資額を増やす


②金融業界の過大・無用な情報提供
常に以上に豊富な情報にアクセスできてしまう環境が用意されている。
これは投資家のパフォーマンスに対する呪いとして働きます。

・毎日24時間供給される経済・投資ニュース
・ソーシャルメディア情報の氾濫
・短期・月次で発表されるさまざまな指標
・毎日の投資口座アクセス
・目標達成ではなく利益最大化に重点を置く

こうした環境や心の動きから、投資家は短期的な運用成績や相場の動きに心を惑わされるようになってしまうと記事は述べています。

投資情報にふれればふれるほど、投資家はパニック状態で売却したり、高額で購入したり、投資計画を放棄したりしやすくなるというわけです。

こんな心の動きを逆手に取るなら、こうなります。

・ニュースを見ない、気にしない
・ひんぱんに口座にアクセスしない
・計画通りの投資を続ける


③損失回避対策の不備
自分の心の動きも問題だが、そもそもの投資計画やポートフォリオの作成において「損失回避」が十分にされていないということも問題である、と記事は言います。

人は損失の痛みを、同額の利益から得られる喜びの2倍に感じます。

なので、市場が動揺すると損失の痛みを回避するために、投資計画を破って安値で資産を売り払ってしまうということが起こり得るわけです。

儲ける可能性を追求するよりも損失を限定しておく方が、計画通りに投資を続けやすくなるので結果的に目標達成の可能性が高まります。

こんな心の動きを逆手に取るなら、こうなります。

・相場下落のシミュレーションをしっかり行い、心構えを作っておく
・自分が望むより株式・不動産(REIT)の割合を下げたポートフォリオとし、その分節約して投資額を増やす


まとめ

「儲けたい」
そしてその2倍「損したくない」

こんな心の動きが、長期投資の結果において、このどちらの欲求をも達成できないという惨劇につながってしまいます。

長期投資の結果ですから、取り返しがつきません。
少しでも早い段階で自分を戒め、できれば逆手に取った行動を行っていくことです。

「儲けたい」という心の動きにカウンターを食らわせるには……
・買いたくなったら → 我慢して計画通りの投資を続ける

「損したくない」という心の動きにカウンターを食らわせるには……
・売りたくなったら → 我慢して計画通りの投資を続けるか、むしろ投資額を増やす

そもそも、不動心を持つためには……
・相場下落のシミュレーションをしっかり行い、心構えを作っておく
・自分が望むより株式・不動産(REIT)の割合を下げたポートフォリオとし、その分節約して投資額を増やす
・ニュースを見ない、気にしない
・ひんぱんに口座にアクセスしない

一年の計は投資計画とポートフォリオの見直しにあり、です!

人生を豊かにする「投資」の専門家
日野秀規でした。
ありがとうございました!

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