インデックス投資の有効性に陰りが差し始めている

 投資信託は庶民の資産形成に最適の投資商品です。少額から購入でき、世界中の株式・債券・不動産からコモディティ・ヘッジファンドまで自由自在に分散投資をすることができます。短期間で大きく儲けるには向きませんが、長期間で着実に資産形成をしたい人にはマストで利用してもらいたい商品です。

「長期分散投資で資産形成」が定着する背景には、インデックス投資がこの十数年ですっかり浸透したことがあります。

「ノーベル経済学賞に裏打ちされた投資法」「長期ではほとんどのアクティブ運用がインデックス投資に勝てない」ということが、まるでリンゴが木から落ちるのと同様の「科学的な事実」として勇ましく語られる時期がありました。金融庁がiDeCoやつみたてNISAなどの資産形成スキームを提供し、その中で低コストインデックス投資の推進を図ったことも相まって、インデックス投資の「聖域化」が進みました。

 ただ、ここにきて私は、インデックス投資の有効性に陰りが差し始めていると感じています。

 その理由の1つは「インデックス投資がバリュエーションを高騰させていること」、もう1つは「『科学的事実』によりかかるあまり、『長期』を『永遠』と勘違いしていること」です。

値付け機能が弱っていく金融市場を漫然と追随

 上でふれた個人投資家における「聖域化」だけでなく、機関投資家においても世界的に投資手段にインデックスETFが選ばれるようになっています。その結果、インデックス投資商品に保有される株式・債券などの資産の規模は雪だるま式に大きくなっています。

 インデックス投資商品は、時々刻々の市場の姿(ポートフォリオ)をそのまま購入します。そこには「高くなった株を売り、安くなった株を仕込む」という、金融市場の「値付け」機能は存在しません。
 インデックス投資の割合が増えれば増えるほど、金融市場が企業の実態を反映した正しい値付けを行う機能が低下していきます。

 加えて、年金基金などの巨大な長期資金がインデックスに流れ込み続ける結果として、「高いものと安いものの差が失われる」だけでなく、「全体的な価格」も上がります。たとえば、かつては1株あたり利益の5倍の株価がついていた銘柄(ぼろ株)が、インデックスに投資資金が流れ込むことで、業績が何もよくなっていないのに、1株当たり利益の15倍の株価がつくようになっているというような例が珍しくありません。値付け機能が正しく働くなら、業績が良化していない銘柄の株価はさえないままのはずなのです。

 単純な事実として、投資は買った値段より高く売らなければ儲かりません。つまり、割高な株価で買うほど、利幅をとることがむずかしくなります。

 値付け機能が弱った状態の金融市場を漫然と追随する資金が流れ込み、良いも悪いもなく、市場全体が水ぶくれしているのが今です。インデックス投資がバリュエーションを高騰させています。

人の人生における「長期」とは?

 一方、「仮に今の資産価格が水ぶくれだとして、それを利用して儲けられる投資家がどれほどいたというのか?」というのがインデックス投資からの強力な反論です。バリュエーションや経済環境の分析を利用して儲けられるとうそぶく向きは絶えませんが、長期的にインデックス投資を上回り続ける運用を行うのは非常にむずかしい、というのは確かです。

 とはいえ、その「長期」ってどんだけでしょうか?
 人の人生において、たとえば10年は十分に「長期」ではないでしょうか?

 株式市場の歴史をひもとけば、株式インデックス投資の成績が銀行預金を下回る期間が10年、20年にわたったことも少なからずありました。

 直近の例では、2000年を頂点にはじけた米国ハイテク株式バブルでは、その後約12年にわたって、株式インデックスが2000年の頂点を抜き去ることはありませんでした。2000年に、ちょっと気を利かせてハイテク株式を避けたり、当時激安状態だった新興国株を購入したりした投資家は、インデックスの低迷を尻目に、着実に収益を積み上げていったのです。

 iDeCoやつみたてNISAで今調子のよい米国株式インデックス、あるいは全世界株式インデックスを積み立てるのが最も合理的であると決めつけるのは、インデックス投資をあまりに盲信しているように見えますし、それによりかかって安心したいだけとも見えます。インデックス投資の有効性は、10年、20年単位の逸脱が起こりうる程度の「固さ」しかないのに、です。

それでは一体どうしろと?

 もちろん、資産運用のとっかかりとして、やらないよりはインデックス投資を始めてみる方がはるかに前向きです。私も時間を3,4年巻き戻せるなら、たいていの人にインデックス投資を推奨していたと思います。

 しかし今は、明らかに「逸脱の時」です。今、私は自分の親兄弟やごく親しい人に、インデックス投資を勧めません。とはいえ、インデックス投資を上回る可能性が高い投資手段を自力で見つけるのはむずかしいのも確かです。

 それなら一体、どんなふうに資産を形成していったらよいのか?

 そこで私は次回以降、選びに選び抜いた、本当におすすめできる投資信託を紹介していきたいと思っています。

「極上」のワインのように、時がたてばたつほどかぐわしさを増し、価値を上げていく投資信託を紹介していきます。