世界の株式に投資するアクティブファンドのほとんどは、長期的にはインデックスファンドに勝つことができません。

このことは以前詳しく記事にしました。
海外株式インデックスはほぼ常勝、それでも凌駕する方法とは?

米国のS&Pダウジョーンズ社が毎年世界各国の投資信託を調査し、株価指数に対するアクティブファンドの成績を発表しています。

アクティブ運用されているグローバル株式ファンド(日本を含む)の92.3%、国際株式ファンド(日本を除く)の93.0%が、10年間の運用成績でインデックスファンドに敗れている現状です。

こうした状況を踏まえ、機関投資家もインデックス運用、およびスマートベータ運用への切り替えを進めています。
アクティブ運用に冬の時代が来ています。

しかし、中には長期にわたってインデックスを大きく打ち負かしているアクティブファンドも存在します。
運用の内容をよく確認し、今後も再現性がありそうなら積極的に活用していくことで資産運用に大きなプラスをもたらします。

その有力候補ファンドに迫っていきます。

「総経費率10倍」をものともしないファンド……と言い切ってよいものか?



今回紹介する「モルガン・スタンレー グローバルプレミアム株式オープン(ヘッジなし)」は、三菱UFJ国際投信がファンド運用を行っていますが、実質的な運用指図はモルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメントが担当しています。

国内有力ネット証券で購入できます。
総経費率は2.09%と、アクティブファンドとしては相当の水準ですがインデックスファンドの0.19%と比べるとその高さは歴然です。

モーニングスターの「グローバル株式・除く日本・ヘッジなし」カテゴリーにおいて、年率リターン(5年)8.86%で124本中4位、シャープレシオは1位の好成績を収めています。

シャープレシオの高さは、比較的落ち着いた値動きながら効率的に収益を得る運用ができていることを意味します。
投資家にとっては「不安なく高収益が得られた」理想的なファンドです。


インデックスファンドとの比較はこの通りです。
実はここ5年間の運用成績では大差をつけていましたが、設定来では差はわずかです。

2018年6月くらいまではインデックスファンドに比べ一進一退というところでしたが、2018年末に向けての調整時期に下落幅を抑えて以降、2019年末まで着実に差を広げてきました。

この調子で長期運用となれば、差をますます広げていける……のでしょうか?
精査していきます。

一番大事な「コンセプトと長期運用成績」をしっかり確認

①プレミアム企業とは何だろう?

当ファンドの目論見書に記載されている「プレミアム企業」の条件です。
数値上で示される高収益力に加え、その確たる根拠を見きわめているようです。

評価項目として挙げられている中で「ブランド力・特許・販売網」、そして「参入障壁・経営陣」などが目に留まります。
これはウォーレン・バフェットの言う“wide moat”(広い堀)にほかなりません。


ビジネスを取り囲む堀が深く広いほど競争相手が現れにくく、売上の安定・低投資支出・高収益を継続していけるという考え方が、バフェットの投資の核にあります。

当ファンドはこうしたwide moat企業といえる20~40銘柄に集中して、割高な価格を避けて投資します。

かつてバフェットは「すばらしい企業にほどほどの価格で投資する方が、ほどほどの企業にすばらしい(割安)価格で投資するよりはるかに良い」と言いました。
集中投資も彼の流儀です。

公言してはいませんが、隅々までバフェット・イズムに貫かれたファンドです。

②ファンドの中身は、実は……
当ファンドのマザーファンドは、米国で2001年11月から運用されている“Global Franchise Portfolio”と同一方針で運用されています。
保有上位10社の銘柄と保有比率が完全に一致します。

“Global Franchise Portfolio”については、昨年末に当ブログの別記事でふれていました。
インデックスを超える収益「アルファ」を安定的に得るための秘策「スタイル分散」 このファンドにおまかせしてスムーズ・ライド「ラッセル・インベストメント外国株式ファンド 愛称:ワールド・プロフェッショナルズ」

複数の運用スタイルを1つのポートフォリオにまとめて運用している「ラッセル・インベストメント外国株式ファンド」で、成長型運用に“Global Franchise Portfolio”の戦略が採用されていました。

世界的に著名な運用会社であるラッセル・インベストメントが世界各国1,390の運用商品を運用体制・運用成績ともども精査した結果、成長型運用の指針として選ばれた優秀な戦略が“Global Franchise Portfolio”だといえるわけです。




先進国株式インデックスとの比較で、リスクをかなり低く抑え、効率的に収益をあげていることがわかります。
この10年間で、先進国株式インデックスを年率3.51%上回ってきました。

特にこの3年では、インデックスに比べ上昇局面では若干少ない程度の収益をとり、下降局面ではマイナスを大幅に抑えました。
理想的な運用を行えていたことがわかります。


保有上位10銘柄です。
生活必需品・ヘルスケアセクターといった安定成長企業への投資が目立ちます。
いずれも世界的に著名な優良企業です。

グローバルな決済インフラ企業であるVisaや、給与計算など企業総務代行最大手のAutomatic Data Processing等も含め、長年にわたる信頼と替えの利かなさが“wide moat”となっている企業群といえます。


運用開始来の運用成績です。
ベンチマークであるMSCI WORLD指数に大差をつけています。
18年強の運用で年率11.7%をマークし、ベンチマークを年率4.7%上回ってきました。

当ファンドは“Global Franchise Portfolio”のコストに三菱UFJ国際投信の取り分+消費税で0.75%上乗せされていますが、それでも年率4%程度は先進国インデックスを上回ることができた計算です。

コンセプトがはっきりしており、投資先も一目瞭然にコンセプトと合致しています。
今後、運用担当者の変更があったとしてもコンセプトが引き継がれているかどうかを確認しやすいというのも重要な点です。

「成長型運用」その賽の目はこの先どう出る?

当ファンドは成長型、つまりグロース株投資に分類されています。

世界的にこの10年、FAANG(フェイスブック・アマゾン・アップル・ネットフリックス・グーグル)に代表されるIT巨人を頂点にいただくグロース株投資が、割安型=バリュー株投資をほぼ一貫して打ち負かしてきました。

当ファンドが市況に乗って運用がうまくいっていただけであるとすれば、この先再びバリュー株優位の相場が来た時に、運用成績が急降下する可能性があります。

10年以上グロース優位であったということは、ひとたび転換すればバリュー優位が長く続くエネルギーをため込んでいるといえるかもしれません。

そもそも、超長期ではバリュー株投資がグロース株投資を上回ってきた歴史があります。
株式市場研究においても、バリューはリターンを得るファクターとして確立されていますが、グロースはファクターとして認められていません。

こうした点を踏まえて、“Global Franchise Portfolio”の運用成績を細かく確認していきます。

①過去のバリュー/グロース相場の推移を確認
モルガン・スタンレー グローバルプレミアム株式オープン(ヘッジなし)の親ファンドである“Global Franchise Portfolio”は、2001年11月に運用開始となりました。
以来、世界株式市場はバリューとグロースを行き来してきました。


JEROEN BLOKLAND FINANCIAL MARKETS BLOGより引用)

上のグラフは、当ファンドのベンチマークであるMSCI WORLD指数のバリュー/グロース版を用いて、世界株式市場の方向感を示したものです。

バリュー指数をグロース指数で割った数値をグラフ化しており、右上がりならバリュー有利、右下がりならグロース有利です。

起点が1975年1月で、2018年までの44年間のトータルではバリューが優位でしたが、ここ12年ほどはグロースが大きく巻き返したことがわかります。

もう少し細かく見ていきます。


2002.1~2003.1の1年間は、短いながらもグロース株優位の時期でした。
青線がこの間の“Global Franchise Portfolio”、橙線がMSCI WORLD指数です。

指数が20%ほど下落したのに比べ、当ファンドは8%ほど上昇しました。
やはりグロース株優位の期間は強いようです。


2003.1~2007.1にかけては、バリュー株優位の時期となりました。
4年間で指数に4.6%ほど負けていますが、ほぼほぼついていくことができたという形です。


2007.1~2020.1にかけて、ふたたびグロース株優位の時期となりました。
指数が約2倍となったところ、当ファンドは資産を3倍以上に増やす力を示しました。

②今後の展開をどう考え、どう対処する?:グローバル株式全天候型ポートフォリオ
世界株式市場では約13年にわたりグロース株優位が続いています。
ここ数カ月でバリューの復権もごくひそやかにささやかれていたりはするものの、まだ明確にはなっていません。

バリュー投資家はあきらめの境地にあるともいえる状況ですが、超長期ではバリュー優位だったことを忘れてはいけないと思います。
必ず復権はあるはずです。

モルガン・スタンレー グローバルプレミアム株式オープン(ヘッジなし)は、バリュー優位の時期には市場にとんとんでついていき、グロース優位の時期にはぶっちぎって好成績を収めてきました。
非常に安心感があり、深く考えずがっちりホールドで良いファンドです。

もう少し工夫するなら、当ファンドと補完関係にあるファンドを組み合わせると運用成績がより安定します。
グロース優位の時期には市場にとんとんでついていき、バリュー優位の時期に大きく伸びて長期で市場を上回るファンドとの相性が良いわけです。

毎度毎度で恐縮ですが……
あおぞら・徹底分散グローバル株式ファンド
新興国を含む全世界株式に徹底的に分散しつつ、小型・バリュー・高収益の企業を多めに保有するポートフォリオです。
年間1%を切る低コストも魅力です。

超長期のバリュー優位や、現在の世界各市場の評価も含めた「グローバル株式全天候型ポートフォリオ」をこのように考えました。


超長期のバリュー優位と低コストを踏まえ、あおぞら・徹底分散グローバル株式ファンドを60%とします。

モルガン・スタンレー グローバルプレミアム株式オープン(ヘッジなし)は、日本のモーニングスターではグローバル株式(日本除く)に分類されていますが、元来の米国ファンドは先進国株式を投資対象としています。
今後日本企業が含まれる可能性もあります。

現在割安かつこの先も高成長の続く新興国株式を対象に、値動きを抑えたクオリティ型運用を行っている三井住友・新興国ハイクオリティ株式ファンドが好相性です。

この先、米国株式の極度な割高が解消されれば、モルガン・スタンレー グローバルプレミアム株式オープン(ヘッジなし)を増やしてその分三井住友・新興国ハイクオリティ株式ファンドを減らしてもよいと思います。

まとめ

モルガン・スタンレー グローバルプレミアム株式オープン(ヘッジなし)は、米国モルガン・スタンレーが運用する“Global Franchise Portfolio”と同一方針で運用される、グロース型運用ファンドです。

“Global Franchise Portfolio”は20年にわたる運用レコードがあり、先進国株式指数を年率で約4%以上上回ってきました。
その運用体制は大手運用会社ラッセル・インベストメントの運用会社評価部門にも認められています。

この20年間において、バリュー優位の時期には先進国株式指数と同様に推移し、グロース優位の時期に指数に大きく差をつけ好成績を収めてきました。
非常に安心感があり、深く考えずがっちりホールドで良いファンドです。

さらに工夫するなら、バリュー型ファンドと組み合わせることでより運用成績の安定が見込めます。

「グローバル株式全天候型ポートフォリオ」をiDeCo口座で運用できればベストなのですが……
各運用機関の営業力に期待したいところです。

当ファンドのポートフォリオは、個別株式運用をする際にも参考になります。
経済ショックの底で買い込めれば永久保有で行ける銘柄群です。

というわけで、ゆっくりお金持ちになるためのお役立ちファンドをご紹介しました!


人生を豊かにする「投資」の専門家
日野秀規でした。
ありがとうございました!

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